yakinikunanzan会長の事業承継奮戦記

子育てと事業承継について

口蹄疫禍から学ぶこと(7月23日)

人と牛とふる里を育てる放牧畜産研究会の3日目の行事は、京都大学農学部総合館の教室を会場に開催された「畜産システム研究会」のシンポジウムへの参加です。
テーマは、「口蹄疫禍を繰り返さないために」



このシンポジウムに参加するために京都に前日入りなさった宮崎の獣医師さんたちが、南山で前夜祭とばかりに(?)焼肉と焼酎で盛り上がってくださったおかげで、敷居の高いアカデミックな雰囲気の会にも、「やあやあ、昨日はどうも・・・」と、勇気を出して参加することが出来ました。


シンポジウムでは、1年経ったから語れるという「本当の話」をたくさん聞くことができましたが、口蹄疫を封じ込めるため、外から応援に入った専門家たちは、雄弁に語れても、宮崎の現場で、口蹄疫の発生時から農家さんと家畜を守るために必死で戦ってこられた獣医師さんや現地の農家さんたちの思いは晴れることなく、整理できる言葉になるまで、まだまだ時間がかかるのではないかと思いました。



口蹄疫は、たった10個の菌数で牛に感染し、ブタで大増殖するすさまじい感染力を持っているため、発生が確認されたが最後、その牧場のすべての家畜は全頭殺処分するしかないのだそうです。


2月ごろから「どうもおかしい」と現場には口蹄疫への不安があったのだそうですが、「口蹄疫ではない」と思いたくなる心理は十分理解できます。
見えない菌との戦いは、見えない放射能との戦い同様、被害者が加害者になる構図が同じで、正しい情報を正直に公表した被害者が、結果、財産と信用を失い、バッシングされることになるのですから、本当にいたたまれません。


口蹄疫は、いまだに発生経路が特定できておらず、東アジア全域に口蹄疫が広がっている以上、いつ再び日本に持ち込まれるかわからない状態にあるのだそうです。
そんな口蹄疫を撲滅させた誇り高い日本の畜産業界が、セシウム汚染牛に対しても、一日も早く信頼を取り戻せる状態を確立してほしいものです。


「疑いがある」という情報は公表されても、「その結果が陰性だった」という情報は公表されなかったという悔しさを語っておられた宮崎の獣医師さんの発言も印象的でした。
セシウム汚染についても全くそのとおりで、疑いの報道はされても、安全が確認された国産牛についての情報は表に出ないため、今は、東北の牛のすべて、いや、ある意味国産牛のすべてが汚染の疑いをかけられたまま消費を低迷させています。


「技術的に安全はつくれる。でもそれを簡単に安心に結びつける方法はない」ということを痛い思いで学びつつ、今は、生産から消費まで、関係者が一丸となって正しい情報を共有しあい、食の安全への誠意を尽くしていくしかないのかもしれません。