yakinikunanzan会長の事業承継奮戦記

子育てと事業承継について

舞鶴で出会った愛農のおいしいもん


愛農高校養豚部の生徒たちがが実習で育てている豚を、「愛農ナチュラルポーク」として世に出してくださったサカエヤの新保社長が、「舞鶴にすごいお店がある」とおっしゃるのがずっと気になっており、6月のある日、思い切って息子(愛農高校49期生)と一緒に行ってみました。
京都縦貫道でとても近くなった京都府北部の舞鶴市。市街に入るとすぐに目に入った和風でおしゃれなお店が「サブール・ド・ラ・メール」。




その日のメニューは、愛農ナチュラルポークとジビーフ(49期西川雄喜くんのお母さんが育てた完全放牧のアンガス牛)のほか、愛農の聖地・舞鶴の西方寺平の野菜、卵、鶏肉…と、大感激。

ビーフには西川奈緒子さんから送られたというジャガイモをあわせ、愛農ナチュラルポークには西方寺平の野菜が目にも鮮やかに添えられて、西方寺の「平かしわ」(だいらかしわ)のコンフィも絶品でした。︎





オーナーシェフの山本拡樹さんは、京都の調理師学校を卒業後、神戸の老舗フレンチレストランで修行され、渡仏。パリのビストロや星付きのレストランで腕をみがいて帰国されてからは、神戸で店を構えたかったところを、お母様の急逝でご実家の和食店を継承せざるを得なくなり、「サヴール・ド・ラ・メール」をオープンされたのだそうです。
http://www.sd-lamer.com/


うどんやおそばを売っていたお店をフランス料理店にするのは、なかなか大変だったようで、「うどんはないんか」と言われながら、「洋食といったら、オムライスとスパゲッティ」という顧客のニーズにも合わせ、どんなにくじけかけても素材へのこだわりと料理への情熱を捨てることなく17年間舞鶴で踏ん張ってこられました。


フレンチのシェフならではのことですが、新保さんの手がける赤身の牛肉に出会えてやっと料理人としての意欲が蘇り、愛農ナチュラルポークやジビーフに出会ってからは、「こんなドラマがありうるのか」と、孤立感から解放されていかれたそうで、半端ない向上心で腕を磨き続けておられます。


そんな山本さんですから、自家製のパンは、粉を石臼でひくところから。肉はサカエヤの新保さんからの取り寄せで、愛農ナチュラルポークやジビーフのアピールに力を入れ、さらには、愛農高校卒業生たちが有機農業を営むムラ、西方寺平の霜尾さんや添田さんたちとも出会われることとなりました。



西方寺平は、愛農高校50年の歴史とともに過疎の村に愛農高校で鍛えられた新規就農者を受け入れ、子沢山の村へと再生された伝説のムラです。
愛農高校1期生の霜尾誠一さんの偉業があまりにも有名で、米、野菜、養鶏に力を入れておられる12軒の地区です。思いがけず、そこの鶏肉と卵とお野菜を堪能させていただけたのですから、本当にラッキーでした。



食事のあとは西方寺平へも行って、愛農高校でよく見かける顔だらけのムラを霜尾誠一さんの長男、霜尾共造さんの案内で散策させていただきました。
なんと、西方寺地区は、入り口に門のある誇り高い独立国家のようなムラです。




かつては深刻な過疎地だったそうですが、活気のある手入れの行き届いた西方寺には、「ともぞうトマト」のハウスや愛農高校卒業生で新規就農された添田さんの黒毛和牛、愛農専攻科生のがんばる玉ねぎ畑などが広がっていました。
ここでは、特に養鶏が盛んで、鶏肉の加工場も。


鶏をお肉にする日には、加工場の入り口に村のおばちゃんたちの杖が何本も並ぶのだそうで、西方寺平には若者だけではなく、元気すぎる高齢者が多いということにも驚かされました。






さて、西方寺平の鶏肉が、このところ、サカエヤの新保さんに少しずつ流通の糸口を開いてもらっているようで、とても楽しみです。
フェイスブック上のこんな告知であっという間に10羽が完売していて驚かされました。

【門外不出の平かしわ】
西方寺平は、赤岩山(あかいわさん)中腹にあり、江戸時代の宮津藩田辺藩国境警備隊の村です。

辺鄙な山奥にもかかわらず全軒が養鶏を営むことで三八豪雪などで離村ブームだった時期を乗り越えました。今でも雪の多い年は170センチ近く積もる事があります。

12軒のうち半数くらいが愛農高校の関係者で、早くから村の将来に危機感を抱き新規就農、担い手の受け入れを開始していて、現在9軒のうち若手農業後継者がいる家は新規も含め6軒います。村の平均年齢も若く39歳位です。村のほとんどが専業農家で、積極的に他地域で耕作をする強者や村づくりの中心人物がいます。

平かしわは現在残る3軒の農家のおばちゃん世代が昔から肉処理をして近隣に配達をして生計を立てているいわば根強い地域限定特産物です。ゆえに門外不出、村から外に出たことがない鶏なんです。

平かしわの焼き鳥は地域のイベントで毎回すぐに売り切れるほど人気があります。ただし地域外の方が食べると身が固いので、みんな引きます。しかし噛めば噛むほど旨い肉は根強いファンが居ます。
消防団では必ず焼肉の後に平カシワを〆で食べてやっぱり平カシワウメーなーってなります。こんなかしわですが興味ありますか。



*****以上新保さんの記事引用


サカエヤの新保さんは、近江牛の産地で近江牛専門店として圧倒的なブランドと経営基盤を作られましたが、入荷が不安定な愛農ポークやジビーフを一流の料理人につなぐという、不効率で不安定な少ロットのお肉の流通を担われるようになってからは、生産者の人柄に惚れるお肉を選び、売上を半分に減らしてでも自分が好きなお肉を好きな人にだけ届ける商いにシフトしたいと公言されるようになりました。

お金を大きく動かす商いには、単純なセオリーがありますが、人の心を大きく動かす価値ある仕事に、セオリーはありません。
大切な人のために、大切に育てられた命ある食を届けるという仕事は、損得ではなく共感と信頼でつながる豊かさを目指しているのではないでしょうか。
健全な食を支えることを喜びとする人たちが、今や地下茎のようにつながりはじめていることを、私は舞鶴の地で実感したのでした。