yakinikunanzan会長の事業承継奮戦記

子育てと事業承継について

人と牛とふる里を育てる放牧畜産研究会(7月21日)


口蹄疫で、あれほどの大量の殺処分があったにもかかわらず、牛肉価格が高騰することはありませんでした。品不足になることもありませんでした。
それほど、和牛の生産量は多すぎるということなのでしょうか。日本の畜産農家さんの窮状は、ほんとうに深刻です。


そんな中で、「もっと、動物福祉(アニマルウェルフェア)や環境に配慮した、安全安心で自給率の高い、そしておいしいお肉になる、持続可能な飼育を・・・」なんて消費者は簡単に注文をつけますが、エコはエコノミーではないという現実の壁が大きく立ちはだかります。
夢のある畜産、若者が参加したくなるような畜産、地域が元気になるような畜産を・・・という思いを持っているひとはたくさんいても、農家さん側の経営が成り立っていかねばどうにもなりません。


ところが、南山の産直和牛をつくってくださっている農家さんたちは、少しでも理想に近づこうと相当な努力をしてくださっています。
京たんくろ和牛の日本海牧場さんは、短角牛の母牛を山に放牧してタンクロを作り、「京とうふ藤野」さんの乾燥おからでエコフィードに取り組んでくださっていますし、近江牛の木下牧場さんは、自給の飼料と国産飼料だけで近江牛を育てる実験にも挑戦し、牛たちのための放牧場(運動場)まで作ってしまわれました。いわて短角和牛の生産者さんたちは、広大な山で母子放牧をしながら自給のデントコーンサイレージによるプレミアム短角牛づくりに汗を流されています。
それ以外にも、本当にすばらしい取組みをなさっている畜産農家さんたちがたくさんおられるのですが、どんなに愛情深く良いエサで、環境にも配慮して育てた牛でも、それがお肉となるとその価値は、高いか安いか、霜降り度や肉の色、やわらかいか硬いか・・・だけで評価されてしまいます。


こだわり農家さんの努力を消費者に伝えようとしても、畜産の現実はあまりにも複雑で、言えば言うほど、「足りないところ」が目立ってしまうという、なんともトホホな結果に終わってしまいます。


そんな現実を何とかしようと、夢を語れる関係者たちといっしょに立ち上げたのが、「人と牛とふる里を育てる放牧畜産研究会」。狭い日本で、自給飼料の増産やエコフィード、放牧を取り入れた理想の畜産のあり方を、生産者から消費者までが一緒になって考えて見ませんか? というのがこの会の目的です。


7月21日はこの研究会の初会合。研究会メンバーが集まってお互いの情報を交換し、それだけでも興味が尽きず時間不足ではあったのですが、そのまとめも兼ねて、「やまけん」こと食ジャーナリストの山本謙治氏に講演をしてもらいました。この講演会からは一般参加可能イベントで、飲食関係者、某県の職員さんたち、畜産農家さん、やまけんさんのファンの方等たくさんの方が集まってくださいました。



やまけんさんの講演で、日本の農産物が質で国際競争に負けるかも・・・とあせったのは、安全性はもちろん、環境や動物福祉に重きをおいたエシカルな畜産物への評価基準ができあがって、その専門店が成り立っているということでした。



この物差しが日本に持ち込まれたらひとたまりもありません。そうでなくとも放射能汚染で国産牛肉より輸入牛がもてはやされるようになっているのです。自国の農を守るエシカルな消費行動を求めて私たちもここは踏ん張らないといけません。
日本には日本独自の物差しができないと・・・と、かなりあせってしまいました。


で、やまけんさんの講演のあとは【やまけんさんが育てた短角牛(国産丸)を食す」懇親会!


この日のためにサカエヤの新保さんが用意してくださった国産丸のドライエージングビーフ(ロース)はこちら。



純粋但馬の近江長寿牛のロースもドライエージングで食べ比べに花を添えました。
近江長寿牛と言っても、これは1産しただけの経産牛ですのでまだ若いのですが、お乳の出が悪くて子育て向きではないということでお肉になりました。粗飼料育ちなので肉量は200キロほどだたとか・・・。



赤身で育った牛の価値向上に、ドライエージングの研究も一緒にしていくのであります。
この骨付きロースを、サカエヤの新保さんが脱骨カットしてくださったのですが、この職人技はすばらしいものでした。


改めて、牛1頭の脱骨の技をみんなで勉強する機会も研究会で企画したいものです。



【関連記事のURL】


京都新聞http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20110722000107
研究会メンバー新保さんのブログ⇒http://sakaeya.keikai.topblog.jp/blog_detail/&blog_id=7&id=114