yakinikunanzan会長の事業承継奮戦記

子育てと事業承継について

牛肉から日本の食と未来を考える会

yakinikunanzan2009-10-15



生産現場の情報が、消費者にとても遠い牛肉・・・。
焼肉屋ごときが大それたテーマの勉強会を開くのは、本当におこがましいことでしたが、南山が何を目指してがんばればよいのか、がんばることに価値があるのか、そんな迷いながらの毎日を支えるため、10月13日に牛肉の勉強会を開催しました。


鹿児島の名獣医師・松本大策先生のお話は、どこまでもぶれず、いつも過激です。
「酸素をつくるわけでも二酸化炭素を吸収するわけでもないのに、プリウスのどこがeco!?
棚田を守るおいちゃんは、治水事業も浄水事業もして水を作り、二酸化炭素を吸収して酸素を作り、そうしてできたお米がいったいいくらなのか・・・。」


正当な対価を受け取れない食料生産現場を抱える日本の危機は深刻です。


「日本は、プライドを捨てた国ではないか。プライドとは、誰かを支え、誰かの役に立つ志の上に生まれるもの・・・。自国の生産者を守るということは、お母さんを守るということと同じ意味を持つのです。」
と、企業が金儲けのために価格破壊で生産現場をふみにじることの悲しさを浮かび上がらせてくださいました。


簡単に安くておいしい輸入牛肉が手に入るときに、焼肉屋の人気商材のタンもミノも国産で貫こうとがんばっている南山、松本先生のお話で、迷いはふっ切れました。


「自国の生産者を守ることはお母さんを守ること」こんな殺し文句の前に誰が反論できるでしょう。


そして、トレーサビリティーの手間はもちろん、BSE全頭検査や抗生物質の残留濃度管理のための厳しい出荷規制を負っているのが日本の牛肉なのに、それらをスルーした輸入牛が安全だからと出回る矛盾・・・。


まじめにやっている生産者さんの努力は、カットされて商品になったお肉には見えません。
語らねば、伝えねば届かない圧倒的な「値打ち」を、どう理解してもらうかが、一番大きな課題なのですが、本当に難しいところです。


牛肉の勉強会後半は、7種類の牛肉をいただきました。
老眼の目に映る画像そのままのへたくそな写真で申し訳ないのですが、まずは南山の三種の産直和牛(バラとモモ)とお取り寄せの和牛3種(リブロース)。


お取り寄せ和牛3種は、鳥取の大山黒牛(黒毛和牛)、熊本のあか牛(褐毛和牛・熊本系)、そして、なんと12産した放牧の但馬牛(208ヶ月齢)。牛が好きで新規就農された兵庫の田中一馬さんは、繁殖農家さんなのですが、「放牧の但馬牛」作りへの挑戦もはじめておられます。
経産牛でも、再肥育して太らせたら300キロほどのお肉が取れるのに、敢えてその牛が過ごしてきた放牧の環境で余生を過ごさせて180キロほどしか取れないお肉を作られたのが、今回お送りくださったリブロースでした。
ロース断面の大きさは歴然としています。
大山黒牛やくまもとのあか牛のロースと比べたら放牧の経産但馬牛のロースの大きさは4分の一ほどでしょうか。


さすがに脂は黄色みを帯び、包丁が入りにくい硬さだったということでしたが、放牧の母牛、食べてみて驚きました。味が深いのです。硬さも気にならず、おいしい! と感激してしまいました。


しかし、参加した40名の方々の好みは見事にばらばらで、誰がどのお肉を気に入るかは、人それぞれの食べなれた味の記憶とその日の体調、そして、食べるお肉の生産者さんの思い入れがどこまで伝わっているかで、味への評価が違ってしまうというのが現実でした。




渋みのあるワインを好む人、甘いワインが好きな人、それぞれの好みが尊重されるように、牛肉の世界も千差万別な牛肉の個性を味わう薀蓄あふれる情報が必要なのでしょう。


ご参加くださった方によるお持たせ牛肉、三重の「豊田畜産」さんのF1のお肉も味わい、そして、41年がかりのやまち酪農に取り組んでおられる和歌山のくろさわ牧場さんのアイスクリームにも感嘆させられた、幸せな勉強会でした。


短角牛が端境期を迎え、肉の味が微妙に変わる季節になりました。この季節、南山には2シーズン放牧の短角牛が入ってきます。


6トンの穀物が1頭分の牛肉に変わるという、食糧危機と自給率の低下の元凶とされる因果な牛肉・・・。
できる限り自家産の餌で、できる限り粗飼料や放牧、エコフィードを利用したがんばる生産者さんの牛肉を選ぶことで、私たちは、人間に必要な穀物を少しずつ家畜から取り戻すことができるのではないでしょうか。


牛飼いを目指す小・中・高校生たちも親に連れられ、目を輝かせて共に学んだ「牛肉から日本の食と未来を考える会」。本当にすごい勉強をさせていただくことができ、大それてよかった〜思いました。


松本先生、本当にありがとういございました。