yakinikunanzan会長の事業承継奮戦記

子育てと事業承継について

感動の岩手フレンチ食事会、名脇役たち


10月24日の岩手フレンチ食事会では、随所で素晴らしい脇役たちが光りました。
お料理の締めのスープとご飯は、感動もので、ホロホロ鳥のスープは手羽とカブラで出汁がとられ、南部鉄器でローストされたホロホロ鳥のムネ肉と美山の小カブが皮も茎も、つまり成長点ごと入れられました。



スープに使ったお水は下鴨神社で汲んできた神聖なお水です。
そして、意外やこのスープは、梅干しで味が引き締められていたのです。



前日夜中までかかった打ち合わせの折に、伊藤シェフから「梅干しありますか?」と聞かれた際には、南山のスタッフは、思わず口をすぼめて梅干し顔になり、「梅干しは、ないなぁ・・・。」と困ってしまったのですが、下鴨神社へ水を汲みに行くついでに、ちゃんと買ってきました。
唯一、梅干しと水汲みでキッチンに貢献した私は、このスープのおいしさに感動でした。



しかも、数が揃わぬ汁椀で、スプーンも付けずに堂々と出してしまおうという提供法・・・。
「大きいほうのお茶碗を女性のお席に先にお出しするように」という伊藤シェフの指示には脱帽でした。
白い茶碗が女性、小ぶりの茶色い茶碗が男性用と言うことで、なんの違和感もなくスープが出されたのでした。




そして圧巻がごはんです。岩手のひとめぼれと、岩泉から届いた雑穀を、南部鉄器のお鍋で炊くのです。
キッチン側で沸騰したら、ごはんの鍋をテーブルの焼肉用ロースターに移動。裏向けにしたロースターの網に鍋を乗せ、お客様に10分間見張っていただいて、ぐつぐつと鍋ブタの周りに噴き出す水がなくなれば火を消し蒸らします。



炊きたてのごはんの香りと、蒸らしたごはんの味、お焦げの味を楽しんでいただきました。
南部鉄器恐るべし。沸騰してから弱火で10分で炊けるのです。
ロレオールさんでは子どもの料理教室もなさっているのですが、「子どもでも簡単に炊けますから・・・」と言われた通り、ご飯が最高においしく炊けました。




ランチのデザートは、ホウズキのゼリーとカシスのソルベ、南部一郎カボチャのムース3種の盛合せで、オクラの葉が敷かれたお皿にデザートの入った器が乗せられました。


ディナーのデザートは5種なのですが、どうしてもかっこよく一皿に盛れる器がなかったため、ホウズキのゼリーが「アバンデセール」ということでかっこよく先に出され、カシスのソルベ、サルナシのソルベ、南部一郎かぼちゃのムースとホウズキのタルトがメインのデザートとして最後の最後を飾りました。
デザート皿も、最初の料理のお皿を回収してから洗って冷やして・・・という使いまわしでした。





こうやって料理が次々に出されたわけですが、これが前日に食器を決め当日の朝に畑で野菜を採ってきて段取りした技なのですから、いまだ信じられない思いです。


しかも、これだけの料理の指示を出しながら伊藤シェフは料理の途中でのトーク、短角牛熟成ロースのカットと盛り付けの実演、お客様へのごあいさつ、お見送り…と、最後の最後までお客様へのサービスに徹してキリリとした姿を保ち続けられました。


キッチン内では伊藤シェフとロレオールのスタッフさんは、白いサロンエプロンでコックコートを汚さぬようカバーされていました。お客様にいつでもご挨拶できる姿を整えておられるのです。


いつも泥んこのよれよれが当たり前になっている南山のスタッフも、これからは、きりりとした姿になってもらわねば・・・と、大反省でした。


そして裏方の主役ともいえるのがロレオールのスタッフさん2名と岩泉の野中シェフ。キッチンで立ち働く若く美しい女性料理人斉藤舞ちゃんは、伊藤シェフから厳しく鍛え上げながら、師匠にくらいつく真摯な輝きを放っていました。



接客側を仕切ってくださったロレオールの関宮大河氏の気働きも素晴らしく、客席のすべてを見渡して食事会全体の進行管理をしてくださり、BGMの音量調整、お客様への対応、料理を出すタイミングなどを指揮してくださったのでした。(ワインの栓も抜くてくださいました)



野中シェフは終始控えめに、伊藤シェフのもとでたくさんのことを学べる幸せをかみしめながらキッチンの要所要所をお手伝いくださいました。



この日、伊藤シェフの「料理マスターズ・ブロンズ賞」受賞のお祝いと、牛肉サミット準優勝の「短角牛串焼き」開発者の野中シェフのお祝いに上七軒の中里さんからおいでくださった「さと龍」さん。17歳の「さと龍」さんは、10月31日、宮城県仮設住宅をまわられ、被災者の皆さんと交流し、舞を披露して激励されたとのこと。そんな嬉しいニュースを新聞で拝見しました。


この3人は、食事会終了後も後片付けで最後の最後まで働き続けられ、伊藤シェフに「あとはこちらでやりますから」といくら言っても、「あいつらには気のすむまでやらせてください。言っても聞きませんから。」とのことで、伊藤シェフはニコニコとスタッフの頑張りに目を細めておられるばかりでした。


やっと後片付けのめどが立ち、皆で記念撮影ができたのは、日付が変わる前でした。



おっと・・・。飲み物のことを忘れていました。この日お出ししたのは、岩手の山葡萄ジュース、岩泉町の龍泉洞で熟成された山葡萄ワイン「うれいら」、岩泉町の龍泉洞の水でできたお茶「じっ茶ばっ茶」、盛岡の生マッコリ、など。


ロビーでは、岩手のリンゴや安家地大根、山葡萄ジュース、マッコリ、ワインなどの販売もし、ご参加くださった皆さんがお土産にお買い上げくださいました。




本当にみなさまに、大変大変お世話になりました。


ロレオールさんには、技術や名声をはるかに上回る「思い」がありました。
「岩手の安全安心な食を豊かに味わう会」でみなさんが味わってくださったのは、岩手の豊かな食と、岩手で支えあう人たちの美しい心でした。


伊藤シェフからも、野中シェフからも、被災地の現状を背負って頑張る人たちからは「震災にあったすべての地、東北を思いやってほしい」という言葉が語られ、言葉にできない悲しみに寄り添っておられる温かな思いやりが胸に染みました。


10月24日の食事会のことは、私にとっては膝が震え、腰抜けるぐらいの奇跡のようなありがたい出来事で、いまだ消化しきれないまま記録にすることとなりましたが、ほんの少しでも、この記録が東北への想いを共にする人たちへのエールとなり、一緒に頑張れる絆を強めていければと願っています。


本当にありがとうございました。