感動の岩手フレンチ(食事会編)
10月24日(月)。この一日のことを振り返ると、あまりにもかたじけなく、あまりにもありがたく、あまりにももったいなくて、いまさらながら膝が震えてきます。
いわて文化大使のみなさんや、岩手への想いを共にする縁あるみなさんが呼びかけ人に名を連ねて応援してくださったおかげで、この大それた企画を遂行することができたのですが、準備段階で、ロレオールの伊藤シェフが農水省の「料理マスターズ」ブロンズ賞を受賞され、こんなすごい方が気安く京都までおいでくださるということに、実は極度の緊張が走ってもいたのでした。
「炊き出しの乗りで・・・」と、いとも気軽にお願いたのですが、伊藤シェフは本格的なメニューを組み立て、調理器具も送り込み、ロレオールのスタッフ2名も「研修に」とお連れくださったのです。
伊藤シェフの岩手への愛、食への愛、仕事への愛は半端じゃありません。
こんな想定外のおおごとに発展してしまった食事会は、伊藤シェフの料理人としての技術の高さと、その技術をはるかに上回る想いの強さで、参加者を魅了し、大成功を収めました。まさに「心の炊き出し」といえる食事会になっていったのです。
ランチの乾杯はいわて文化大使で宗教学者の山折哲雄先生。
居並ぶいわて文化大使のみなさんも、岩手への想いを熱く語ってくださいました。
当日の料理は、しっかりと写真を撮る暇がなかったのですが、参加者のお1人、「牛肉サミット」で大変お世話になった実行委員の寺田さんが下記ブログでご紹介くださいました。画像が美しく、本当にありがたい記録です。
http://makasetaro.keikai.topblog.jp/blog_my_top/blog_id=6&date=2011-10-24
ディナーは、四宮漣山さんの尺八で始まりました。
東北への想いが、会場のみなの祈りとなって尺八の音に託され、アメージンググレイスと木枯しという曲に皆が聞き入りました。
四宮漣山さんは、演奏活動の収益金を長年にわたって国際ドイツ平和村へ寄付する活動を続けてこられた「心音(ことね)」の主宰者で、3・11震災以降は、東北へ寄付しておられます。こだわりの佃煮で有名な津乃吉のオーナーでもあります。
演奏の間に乾杯の準備ができ、いわて文化大使として呼びかけ人に名を連ねてくださった清水寺の森清範貫主さまが「私は禁酒なんですが」とおっしゃりながらも、乾杯の音頭を引き受けくださり、伊藤シェフの「料理マスターズ」ブロンズ賞受賞のお祝いの言葉もくださいました。
感激したのは、「今年の漢字一字は、私が決めるわけではなく投票で決まるのですが、もしも私に決めろと言われれば、これです。」と、直筆の色紙を披露してくださり、そのまま色紙をプレゼントしてくださいました。
「絆」です。
森貫主さんは、ホンマにええお声で、ええことを言わはる渋いお方どした。
ちょうどこの日、伊藤シェフの栄えある受賞の記事が「岩手日報」の朝刊紙面をにぎわしており、そこには、伊藤シェフの言葉として、「復興に必要なのは人と人をつなぐこと。それが食にはできるはず。」とありました。
http://www.exblog.jp/blog_logo.asp?slt=1&imgsrc=201110/29/37/b0206037_1030267.jpg
人と人をつなぐ食、その豊かな料理人の世界を、私たちは「絆」を感じながら堪能させていただいたのでした。
料理の画像は、盛り付け例しか手元にないのですが、中身をご紹介しましょう。
前菜の「生ハムと京野菜のサラダ。」
生ハムは、夏の「牛肉サミット」で準優勝をした折の賞品です。
牛肉サミットに出品した「短角牛の串焼き」は、岩泉の野中シェフの開発された傑作でした。
このため、野中シェフに生ハムを開封して、切り出していただきました。
サラダは、京水菜、菊菜、ほうれん草、黄にんじん。
種市産天然のホヤのあぶり焼きと森田農園さんのすぐき菜。
八幡平サーモンマリネには、日野菜が合わせられ、森田さんの畑の野菜の花がトッピングされていました。
田野畑村の合鴨スモークは、野中シェフが作ってくださったもので、若い金時ニンジン「京かんざし」が添えられています。仕上げに山葡萄ソースがかけられました。
山葡萄と合鴨はどちらも岩泉町が力を入れている特産品です。
右側は佐助豚。マコモ茸と舞茸が蒸し焼きで添えられました。
岩泉の小本漁港からはスルメイカが届き、イカはあぶられ、南部鉄器でグリルされた皮つき葉っぱ付きの岩手の地カブラが添えられました。赤と緑の万願寺とうがらしが2色のソースになってかけられました。
メインの短角牛熟成ロースは、こちらも南部鉄器でじわ〜っとグリルされ、同じく南部鉄器でグリルされて甘味が出た安家地大根と南部一郎南瓜が添えられ、橋野カブのお漬物がトッピングされました。
熟成したお肉に、発酵したお漬物を合わせるというところが伊藤シェフのすごさです。
伊藤シェフご持参の宮古の塩と菜種油がさっと掛けられただけのシンプルな味付けでしたが、素材の味がここまで引き出されるとは・・・です。
短角牛は、サカエヤの新保社長に骨付きロース1本をそのまま預けてドライエイジングしていただいたのですが、まさか料理一つでここまでおいしくなるとは、ショックでした。
焼肉のロースターで焼いても、とてもこんな味にはならないのです。
これまで、南山は、短角牛を岩手県外では一番おいしく出している店のつもりでいましたが、短角牛さんごめんなさい。
もっと美味しくできるということを学びました。
↑熟成ロースは、トリミングするところも増え、さらに目方が減ってしまいますが、こんなお味になるなら値打ちがあります。
しかも、伊藤シェフの手でメインに仕上げてもらい、皆さんのお席の前で二重の南部鉄器の上で炭で温められ、切り分けて盛りつけられたのですから、この短角牛は、世界一幸せです。
岩泉の安家森を短角牛の放牧で守っておられる合砂哲夫さんの短角牛ロースは、こんなふうに皆さまに振る舞われたのでした。
(続く)
食事会の画像が届いたのでご紹介しましょう。
生ハムと京野菜のサラダ
種市産天然のホヤのあぶり焼きと森田農園さんのすぐき菜(左)
八幡平サーモンマリネと森田農園産の日野菜
合鴨スモークと金時ニンジンの京かんざし(左)
佐助豚onマコモ茸と舞茸
イカの炙り焼きと地カブラの万願寺ソース
短角牛の骨付きロースを熟成してくださったサカエヤの新保社長(牛肉の匠)