yakinikunanzan会長の事業承継奮戦記

子育てと事業承継について

百年の食

yakinikunanzan2011-03-21


昨日、ひょんなことから念願がかなって、渡部忠世先生のご案内で大津市坂本の「麦の家」へ行ってきました。

ここは、「近江の百姓菩薩」といわれた松井浄蓮さんが、戦後、荒れ地を開墾して拓かれたところで、自給自足で6人の子を養われ、今も子・孫・ひ孫が、田畑を耕し、「庭鳥」を飼い・蚕を飼って絹を紡ぎ機を織り・・・と、つつましく美しい「三反百姓」としての暮らしを守っておられるところです。


谷川の水で回していた水車は、数年前の土石流以降は使用しておられないようでしたが、夢のような懐かしい風景に圧倒されました。


急なお願いでしたのに、渡部先生が来られるのならばと、快くお迎えくださったのは松井浄蓮さんのお弟子さん山崎隆さん。「麦の家」の現代表で、浄蓮さんの娘婿さんでもあります。
渡部先生は、まずは、まっすぐに浄蓮さんのお墓に向かわれ、皆順々にお参りをさせていただきました。



今回、この「麦の家」をたずねるきっかけになったのは、1冊の本との出会いがあったからです。
小学館発行の「百年の食」〜食べる、働く、命をつなぐ〜この著者が渡部先生なのですが、この本との出会いは、私の小学校と高校の同級生だった渡部先生の息子が南山に焼肉を食べにきてくださったことがきっかけで、私は、渡部先生の本を入手して、すっかり感動してしまったのでした。



渡部先生は、この本の「はじめに」を、こう結ばれています。

最後に、私の本心であるが、五十年後も、百年後も、後代の人たちが生きる日本が、つつましく平安であることをこころから願う。さらには、その国土が緑美しく、よき家族とよき友人・隣人たちに恵まれた社会であることを、当然にあの世から、私は眺めていたいと思う。そうあることのために、本書が何か役に立つことがあれば幸いである。


三反百姓といわれた小農が、戦後日本の食糧生産を支え、美しい日本の風景と文化を築き上げてきたことを踏まえ、渡部先生は、経済の中で生産高を問う農ではなく、命や文化を養う「日本的な農のあり方」を「麦の家」を理想として説かれるのでした。



雪見障子から琵琶湖の対岸の近江富士、三上山が眺められる浄蓮さんのお部屋の横の囲炉裏の部屋で、山崎さんからもたくさんお話を伺うことができ、最高の一日でした。
「麦の家」には、看板も何もありません。山崎さんにとって「あたり前の美しい暮らし」が、見物人に脅かされないようにするためです。
大地と向き合い「働くことによって清められる」農業の奥深さを教えられ、貴重なお時間を分けていただいたのでした。
本当にありがとうございました。