yakinikunanzan会長の事業承継奮戦記

子育てと事業承継について

原点回帰の創業祭

yakinikunanzan2010-11-23



今日は、南山創業祭の最終日。
創業祭は、南山が原点にかえり、今あることを心から感謝するイベントです。
本当に、奇跡的に生き残ったことに、感謝感謝の毎日です。


南山の創業者孫時英は、「共生経営」という理念を掲げて食と農、都会と農村、経営者と従業員、借り手と貸し手、などなどの関係の在り方を追求していましたが、「共生」という言葉は、あまりにも理念的すぎ、きれいすぎる概念だったように思います。


みんなが共によくなる、みんなが共に生きられるというのは、それこそ天国のようなイメージですが、現実はそんな甘いものではなく、2001年8月の創業者引退後、私たちは、まさに「共生共貧」のバランスを取る企業再建の実務に勤しんできました・・・。



旧世紀の南山



安売りセールに頼っていたBSE直後の南山


先に希望は見えずとも、とにかく働き続けること・・・。
そうすると、「毎日仕事があって、とにもかくにも食べていけている・・・」ということに不思議な感動を覚えたものです。


その後、南山は産直1頭仕入に取り組んで、流通の川上まで勉強したのですが、BSEで疲弊した焼肉屋以上に大きな傷を負った畜産農家の大変な現状に触れ、そこからは「食農協働レストランをめざす」という目標を掲げました。


そうやって生き延びてきた南山にとって、一昨年にできた「農商工連携」という新しい制度は、「これはまさに南山のためにある…」と思わずにおられず、中小機構のプロジェクトマネージャーさんのご助言のもと「京たんくろ和牛」のブランド化をテーマにした事業計画が、農商工連携認定にたどりついたのでした。


実際のところ、「農商工連携認定」という枕ことばをつけたところで、消費者の関心は得られないでしょうが、南山の「食農協働レストラン」としての取り組みをアピールするためにはわかりやすく、こんな銘柄牛の板をつくりました。


明日からの伊勢丹新宿本店で、この銘柄板を掲げてお弁当の実演販売です。





「京たんくろ和牛」という聞きなれない名の和牛は、そう簡単には買ってもらえないという経験を積んでいるので、伊勢丹新宿本店では、南山の近江牛のお弁当も実演販売することにしました。
選び抜かれた最高の近江牛を取り扱っている南山が、京都で新しいブランド和牛づくりをしているのですよと、アピールをするためです。


そこで作った近江牛の銘柄板がこちら。



但馬の血統にこだわる繁殖一貫の近江牛・・・。これを、木下牧場さんは「近江和牛」としてサービスマークをつくり、商標登録しておられるのです。
木下さんのご尊父・初代繁殖一貫の後藤喜代一さんの書かれた「近江和牛」の字をつかって、サカエヤさんの登録された牛のマークも取り込み、木下牧場の近江和牛の銘柄板をつくりました。


吟撰但馬系「近江和牛」は、生産者さんと近江牛専門店のサカエヤさんが連携して生産者ブランドを作りこんでいかれるところへ、南山がしっかりと参加した形で、とても安定した連携事業として進んでいます。



先日食品産業センター主催の「農商工連携研修会」が開催され、京たんくろ和牛のブランド化事業が、先進事例として取り上げられたのですが、そこで、あらためて南山の事例の分析をしてもらい、また、農商工連携の目指すものを再確認することができ、大変良い勉強になりました。


私もパネラーとして参加したので、座長の片岡寛先生(東京理科大学専門職大学院教授)ともお話する時間を持てたのですが、片岡先生は、南山の事例を、「近江牛や短角牛で生産者さんと連携してきたノウハウを、京たんくろ和牛に持ち込んだのですね」と言ってくださり、私は「そのとおり! 本当にそうなんです」と、正直、気分爽快でした。


京たんくろ和牛は、まだ始まったばかりの連携体構築事業だから、農商工連携の認定という支援を受けているわけで、「認定」という支援はなくとも、南山の「食農協働」という農と商の連携は、南山ではすでに体質化しており、いろんな形の連携体ができていると思うのです。


先日の「農商工連携研修会」では、農業が元気になり、地域を活性化するための、農商工連携や六次産業化についていろいろな施策の説明がありました。


でも、正直、本当は・・・、どんな施策ができようが、どんな支援があろうが、要はだれが魂を込めて働きつづけるかが問題なのだと思います。


京たんくろ和牛ブランド化事業の委員のおひとりでもある徳野貞雄先生のおっしゃったとおり、「何をいまさら農商工連携じゃい。農商工どころか金融に葬祭まで連携した農協というシステムがすでにあるやないか。それでもうまくいかんかったもんが、農商工の連携ぐらいでうまく行くかいわけがない。要は、人や。人間が問題なんや!」


私も、本当にその通りだと思うのです。「共生共貧」の時代をいかに豊かに分かち合って生きていくか・・・。6次産業化にせよ、農商工連携にせよ、要は、どう分け合うか、どう担いあうかという人間臭いセンスが問題なのではないでしょうか。


このブログを書いている途中、近所の森田農園さんが、いつもの奇襲攻撃で、不揃いの上賀茂の「すぐき」と、曲がったキュウリを届けに来てくださいました。今日は今からこれをキムチにして、森田農園さんとの連携キムチを作ります。
(11月27日・28日の京都府農林水産フェスティバルで、すぐきのキムチが買えますよ〜!)


明日は、一応テレビ取材もあるようなので、散髪に行ってから残った荷物を背負って、今日の深夜バスに乗り込みます。そして、明日は新宿の母気分で伊勢丹さんで働いてきます。


食と農の世界にいる私は、少なくともおいしいものを作る側で働ける豊かさを満喫し、幸せを実感しています。