yakinikunanzan会長の事業承継奮戦記

子育てと事業承継について

牛を愛した天神様と南山の縁

yakinikunanzan2011-02-20


年末からひた走りで来た南山でしたが、2月17日(木)はお休みをいただき、店舗メンテナンスと1泊2日の社内研修にあてさせていただきました。
17日は、金融機関さんや人事コンサルタントさんをお招きして、社長以下みんなで「でっかい夢を好きなように語る会」をやってみました。
来年度の事業計画や長期ビジョンを作り上げるための、ブレーンストーミングのような会です。


ポインタースタッフ達は、年末に支給された「自己啓発支援補助金5万円」を使ってどんなスキルアップをし、どんな目標を定めたかを発表せねばならず、がちんごちんでしたが、皆それぞれが成果報告書と領収証や資料を添え、すばらしい発表をしてくれました。


日ごろ行けない有名な高級店へ、彼女をつれて行ったレポート、ご主人と一緒にフルコースディナーを体験したレポート、スタッフや友人連れでおしゃれなセレブの立場(?)を味わってみたレポートのほか、デザイン系のパソコン技術を学んだ者、牛肉の基礎知識と技術を食肉センターや食肉学校、繁盛店で学んできた者・・・、スタッフ達は、7人7様に、とても面白い発表をしてくれました。


サービス料を取られた高級焼肉店で、「風格のある女将の存在だけで、こんな高額な料金がまかり通るのか・・・!」と驚いたり、フレンチやイタリアンの感動的な食器使いと盛り付け、そしてシェフ自らがお見送りに出てくださる調理場の意気込みに啓発されたり、世界一の朝食を謳うオシャレな繁盛店で、超オシャレな社員から「上から目線」で、ホスピタリティゼロの待遇をされた経験などなど・・・。
そして、高崎食肉センターの気迫ある仕事人たちの空気と「肉職人」たちの技術や心意気を学んできたスタッフは、最後の研修地「い志井グループ」のすごさも披露。
焼肉食堂「卸)調布食肉センター」では、お客様を喜ばせるために全員一丸となって妥協なくやっている! 伝票なしで声かけだけで通すドリンクオーダーは、全員が耳をそばだててフォローしあってるので、1週間の研修期間中、ただの一度もオーダーミスがなく驚いた!」というのです。


研修の初日午前の部では、「お客様を喜ばせる為に全員総出で一丸となること! お客様に喜んでいただけたかどうかを皆で見届けて次に活かすこと!」これを担当部署を超えて皆にとっての「共通の仕事目標」にしたいという思いで一致できたような気がします。


有難いことに、ご参加くださった金融機関の方からは辛口のご批評もいただき、「社長は夢を語ったけれど、スタッフ達は、実務レベルの課題と改善を語っただけではないか。飲食の枠を超えてもっと自由な発想で南山の空きスペースの活用や、北山通りのあちこちの空き店舗の活用について発想してみては?! 京都の北山通りという立地の価値を再認識するべきです・・・!!」とスタッフをたきつけてくださり、非常に有難い、面白い会になりました。


午後からは学生スタッフ達も連れて、三重県のモクモク手づくりファームで合宿。
大学を出て就職して結婚するのが夢(?)な学生達に、もっともっとでっかい夢を持とうぜ!とばかりに、子どものころの夢と今の夢を語ってもらい、午前中の研修で金融機関さんから投げかけられた「自由な発想での南山の商売の種探し」も、好きに提案してもらいました。


伊勢丹さんの全国おとりよせグルメ京たんくろ和牛焼肉セットを販売していただけるようになったこと、4月6日からまた伊勢丹新宿本店さんのフードコレクションに出展させていただけること、他にもいろいろな催事へのお声がかかっていること、焼肉ダイエットプログラムを京都の飲食業界・観光・美容業界に広げてブラッシュアップし、魅力ある国産赤身肉をメニュー化していくこと、農商工連携事業もさらに深く取り組んで自信のもてる京都でのブランド化を展開すること、食農交流事業を食育と観光事業としても発展させ農家さんの収入を増やすこと、牛肉ソムリエ制度をつくることなどなど、わくわくするようなビジネスチャンスの大風呂敷を広げ、「ガッツリ儲けて、運用益で親のいない子どもたちに就学支援金を出してあげられるような基金を作って、若者達の起業を支援できる南山になろうぜ!」などとスタッフを奮い立たせようとしたのですが、若者達の反応は・・・、予想外でした。


「南山のお肉は本当に美味しいから、もっともっと本店を繁盛させたい。一番美味しく食べていただけるのが、「南山で食べていただく」ことなのだから、とにかくお客様をもっともっと増やしたい」というのが、賢明なスタッフ達の第一目標らしいのです。
それにしても、なんと堅実な・・・!! そら、それが一番儲かりまんがな〜〜。
社長が語るハチャメチャな夢を実現させるには、よほど足元をしっかり固めなあかん・・・と、スタッフ達はいやがおうにも現実味を帯びた冷静さを保ったのかもしれません・・・。


モクモクの合宿では、その後「牛肉の種類と部位ごとのさまざまな特徴の違いや調理法」についても、江口調理長から詳しく学び、翌18日は朝一番でモクモクの創業者の一人吉田修専務のお話も聞かせていただきました。


吉田専務の話は、いつもながらとはいえ、これまたものすごく面白かったのです。
学生達も、吉田専務のスケールの大きい発想や生き方に触れ、時代の見方とセンスを学べてとても啓発されたようです。
私としても、「モクモクさんから指導を受けてるから、私の発想がハチャメチャになるのが理解してもらえるでしょうが・・・?」と、社長が浮く理由を、少しは弁解できたように思います。


吉田専務の話は・・・
農商工連携から六次産業化へと大きな流れができているが、1次産業側からも3次産業側からも六次産業化を目指して生産から販売まで完結させる方向を目指さないといけないということでした。
1次産業で酪農をするなら最低100頭以上の多頭飼育が採算ラインになるところ、モクモクは六次産業化をしたからこそ、ジャージー牛を40頭だけゆったりと飼育して、そこで7人が食べて行ってるとのこと。これは、かつて大動物獣医師として活躍された牛を愛する吉田専務ならではの「夢を事業化した」魅力ある話です。


吉田専務の話は、時代に寄り添う術にも及び、今は、価格競争ではなく、「価値競争」の時代。どれだけお客様に価値を(つくり手の思いを)伝えるかが大事だということ。
そして、消費者が応援したくなる企業のあり方は「一生懸命汗している姿」であって、そこにカネの臭いがすれば気持ちがさめてしまうということも・・・。
モクモクさんは、事業と運動のバランスが取れたすごい起業グループですが、「カネの臭いをさせずにいかに必要な利益を得るか・・・」というセンスには、本当に学ぶべきことが多く、有難い講義でした。


吉田専務は「ストーリーとしての競争戦略」という本を皆に薦めてくださり、「経営は理屈2割に気合が8割。理屈では説明できない幸運(ツキ)を呼びこむ気合、野生の勘を磨かんとあかん」と話され、私にはここが一番印象に残りました。


牛を愛する吉田専務とのご縁で、南山も「牛を愛する焼肉屋」として再生してきたのですが、長文で、ごめんなさい。
やっとタイトルに定めた話題にたどりつきました。


昨日は、北野天満宮で、牛を愛した菅原道真公を祀る天神様にお参りしてきたのです。
ちらほら咲きの梅の香りとすごい数の牛に、牛を愛する吉田専務のご利益同様、牛を愛した菅公さんのご利益を祈ってきたのでした。


「東風(こち)吹かば匂ひおこせよ梅の花 主(あるじ)なしとて春を忘るな」


悲運の菅原道真公が大宰府に流された際に船から降りたたれたのが、南山創業の地、大分県中津市犬丸だそうで、今は跡形もない中津の元南山の敷地には立派な菅公さん「ご着船の碑」があったのです。


牛を愛した天神様に、ご着船の碑のある南山創業の地を守れなかったことを詫び、知恵と野生の勘をお授けくださいと祈って、梅の香りを堪能してきたのでした。