yakinikunanzan会長の事業承継奮戦記

子育てと事業承継について

櫃取湿原を守る短角牛

yakinikunanzan2007-07-28



7月24日(火)、旅の二日目も午後になると、もう10年ほど時が経過したような錯覚に陥いってしまいます。
三上さんのところで沢山出していただいた椅子の後片付けや、炎天下でチェーンソーアートを実演してくださったTAAさんが熱射病になってやしないかなど、気になりながらも、もう気分は舞い上がったままで釜津田を後にし、次の訪問地へ向かいました。
次は櫃取湿原です。


昨年9月に岩泉を訪問した際に「大自然の美しさを守るのが短角牛のすごさなんだ」と、伊達町長がその証拠として見せてくださったのが櫃取湿原の写真。以来夢にまで見たところです。

上記は、この春に茂木さんが写された水芭蕉の群生する櫃取湿原ですが、水芭蕉の次には石楠花が咲く卒倒するほど美しいところで、茂木さんと同じくIターンで岩泉に住み着かれた素敵な女性塚原さんも、この櫃取湿原を見てくらくらっと恋に陥ってしまったということでした。



水芭蕉の花は終わり、大きな大きな葉だけが残る櫃取湿原の奥の奥で、最後の石楠花がひとつだけきれいなまま残っていました。
うす桃色の奥ゆかしい花でした。



櫃取湿原へは県の自然環境指導員をなさっている西間薫さんが案内してくださいました。

草1本抜いてはならない保護林であることなど、しっかり説明を聞いてから湿原へ入りました。










西間さんは、木の名前、花の名前をすべて立ち止まって丁寧に教えてくださり、ゆっくりゆっくりと終点の40号地点までご案内くださいました。


38号地点あたりから笹が茂って道が見えにくくなり、40号地点から奥は行き止まりでしたが、昔はこの奥の奥まで平らかな湿原が広がっていたとのこと。


来年は、37号地点あたりが終点になってしまうのではないかと思うほど、笹の勢いは強く不安になってしまいました。西間さんによると、現在放牧中の40頭の短角牛ではこの湿原の維持はむずしく、70頭の放牧ができればこの湿原は保っていけるということでした。


あと30頭!!


肝心の短角牛は、この暑さで平らなところを避け、涼を求めて山の木陰に群れていました。



ここへは、岩泉町の隣の川井村牧野組合の短角牛が放牧され、子牛にはタンクロ(短角と黒毛のF1。和牛間交雑種)もいるそうです。


各農家さんのところから集まった牛たちがひとつの大きな群れとなって、ここで暮らしているのですが、慣れたリーダーが群れ全体を統制しているのだそうです。


短角牛は、判断力は無いけれども記憶力がしっかりしており、飼い主の声や飼い主の車の音、バイクの音を聞き分けるのだそうです。
放牧中に、飼い主さんが自分のところの牛に会いに来ると、この広い広い湿原に向かって「おーい花子ー!!」と、その農家のリーダー牛の名を呼ぶと、どこからともなく花子が同じ飼い主の元で暮らしている群れを連れ、飼い主のところへ走ってくるのだそうです。


短角牛を愛する人たちの短角牛と共にある暮らしは、本当にくらくらっと来るような魅力に満ち溢れ、体中の細胞が沸騰するような、ぞくぞくする体験をさせていただきました。


夢かうつつかわからぬような岩泉での二日間。


このあとは、盛岡へ戻り、県庁のみなさんと南部どぶろく家でわいわいと割り勘の食事&どぶろくを楽しみ、無理を言ってジャジャ麺も制覇。


それでも思いはずっと岩泉に残り、あと30頭、あと30頭・・・と櫃取湿原で聞いた言葉が耳元に響いていました。