yakinikunanzan会長の事業承継奮戦記

子育てと事業承継について

江口ノート

yakinikunanzan2006-12-24



人の命も会社の命も、今それがあるということ自体、奇跡のような出来事だと思う。
偶然の出来事や出会いが積み重なり、人の思いのエネルギーが、その存在を支えているだけなのではないだろうか。


南山が、奇跡的に生きながらえた原因は、本当にたくさんあるが、
中でも一番大きな要因となってくれたのが、取締役調理長、江口宏樹という男の存在だ。


江口は、もともと学生アルバイターだった。
国立大学の理数系を、人より長い持間かけて卒業し、フリーターとも
ニートともつかない中途半端で、無欲な毎日を過ごしていたのだが、
「和牛の一頭仕入」に挑戦しないと、活路が拓けないという切羽詰った
状況の時に、南山は、彼に頼み込んで和牛問屋へ修行に行ってもらったのだ。


「なぁ、真剣に南山で働かへん?」
と、最初に彼に声をかけたとき、彼は飛び上がって1m以上あとずさりをしたものだ。


しかし、こちらも粘った。
「南山の命運は、あんたにかかってるんや。あんたの腕に技術がつくんやで。
授業料大枚60万円、あんたにかける。頼むは!!!」


それが2年前の秋のことである。


彼は、職人かたぎの和牛問屋で、下仕事もしながら技術を見て習い、学んできた。


他のスタッフに伝授するためには教科書がほしい。
彼は、学んだことをノートにまとめ、南山のスタッフに分かるように伝えてくれた。


そのうち彼は、小料理屋のバイトをやめて南山に専念してくれ、今年取締役調理長に就任。
目覚しい働きをしてくれている。


彼のノートは今、何冊目になっただろう。
黒毛和種、交雑種、日本短角和種、この3種の肉用肥育牛を1頭仕入れしている南山では、
いつ仕入れたどの牛を、どのような部位から商品化して、どう値付けするか・・・。
たいへん複雑な管理が要求される。
彼のノートには、それぞれの牛の仕入れごとに、克明に商品化重量や歩留まりが記録され、
一頭をキレイに使い切るための工夫が記されている。


しかし、彼のノートに記された「江口ノート」というタイトルのさんずいへんの部分は
ノートの模様にかかっているため、その貴重なノートは、誰が見ても「エロノート」と
いう怪しげなタイトルにしか見えないのだ。


歩留まり計算などに、XやらYやら、小難しい関数が出てくることでも
他人を寄せ付けがたいものにしている。


寝袋を持ち込んで泊り込みで仕事をする気迫も彼の孤高さを引き立たせるが、
セコムを作動させて、真夜中に警察が飛んでくることもしばしばで、
常にジャージを着て黙々と働くことから、「モクモクジャージーマン」とも呼ばれている。


しかし、あまりにもジャージ姿がみっともないので、コック服を着てもらおう
ということになり、現在手配中なのだが、それを彼に告げると
「ジャージのかっこよさは、年配の人には分かってもらえないんです」
ときた。


12月、彼は一体何頭の牛を捌いたことだろう・・・。
ヘタクソだった手つきが、今では、本当にすばらしいウデになっている。


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