yakinikunanzan会長の事業承継奮戦記

子育てと事業承継について

日本の未来に希望の種撒くアッパレな牛肉たち


昨日、朝日新聞の日曜特別版に、肉食の大問題が特集されました。
http://globe.asahi.com/feature/article/2012111500006.html


記事には、「牛肉1kgをつくるのに、えさとして11kgの穀物が必要なように、肉を食べられるかどうかは結局、穀物生産の見通しにかかっている。」とあります。
穀物を家畜のえさと人の食料と車とで奪い合っている状況に加え、旱魃による穀物飼料高騰で、日本の畜産が大打撃を受けている状況も詳述され、このままでは食糧危機になるのか・・・と、深刻なムードです。いまさらながら、ではありますが・・・。



この問題は、何十年も前から警鐘が鳴り響いているのですが、それでも耕作放棄地は増え続け、食料自給率は下がり続けているのですから、日本の食糧への危機意識はマヒしているとしかいいようがありません。


しかし、その大問題を見据えて、牛を耕作放棄地や山林で放牧し、草の飼料中心に育てることで穀物の奪い合いをすることなく国土を美しく耕そう!という取り組みが日本の各地で地道に進んでいるのです。


11月13日に京都駅前のキャンパスプラザで開催された農水省のマッチングフォーラムと日本産肉研究会は、放牧や自給飼料で育てる赤身和牛の値打ちをどう消費者に伝えるか、がテーマでした。
朝10時から夜10時までみっちり勉強会。そして翌日は、朝9時に集合して木下牧場見学というハードスケジュールの充実した二日間でした。



セミナー会場には、南山からお弁当110個をお届けしました。その名も和牛食べ比べ弁当です。
農研機構さんが開発された「放牧仕上げの熟ビーフ」(経産黒毛和牛を耕作放棄地に放牧した、熟女風の和牛)と「たちすずかビーフ」(飼料稲「たちすずか」で育てた黒毛和牛)の2種をつかったお弁当です。




昼食後のセミナーは眠くなるのが常ですが、さにあらず。
午後からの会は、新宿溝口クリニックの定真理子先生から始まり、質のよいタンパク源としての牛肉の価値が語られ、府立大学の佐藤健司先生からは、アメリカで食べてこられたドライエージングビーフのおいしさも引き合いに、穀物肥育された和牛と粗飼料(草飼料)中心で肥育された和牛のドライエージングビーフの比較調査結果が語られ、サカエヤの新保社長からは「牛肉の新しいブランド戦略」が語られ、京大の熊谷先生からは、「人と牛とふる里を育てる放牧畜産研究会」で討議されてきた「エシカルな牛肉の評価基準について」の提言がありました。


締めは、九州大学の後藤先生のコーディネートで、南山の社長もパネラーに入ってのシンポジウム。参加者とも活発なやり取りで盛り上がりました。


セミナー・シンポジウム終了後は会場を北山通りの南山に移し、輸入穀物飼料に頼らぬ取り組みの、アッパレな和牛8種類の食べ比べ試食交流会です。



8種の和牛の詳しい資料を配布したうえで、生産者(開発研究者)8人に1分間アピールをしていただいてからお肉を食べました。


前菜は、東北大学の「草原短角牛」のローストビーフ
草原短角牛は、日本唯一のダブルマッスル牛。通常の牛の1.5倍の筋肉量になるといういかにも強そうな牛です。それを「塩麹でマリネしたローストビーフ」にしてお出ししました。



いよいよ和牛8種を食べるのですが、ここで、びっくりするようなことが起こりました。


南山での準備段階で試食したときには、お世辞にもおいしいとは言えなかったお肉たちが、本番では印象をがらりと変えて美味しくなっていたのです。



↑南山の近江牛(木下牧場)、九州大学のQビーフ(久住高原の牧草育ち)、たちすずかビーフ、放牧仕上げの熟ビーフが盛られた黒毛和牛の食べ比べ。



↑南山の「京たんくろ和牛」(日本海牧場)、東北大学の「草原短角牛」、北里大学の「北里八雲牛」(ほぼ放牧育ちの短角牛)、弘前大学の「弘前アップルビーフ」(七戸畜産農協の有機短角牛を、りんごジュースの搾りかすで6ヶ月間歳肥育した短角牛)。


試食に提供された6種の和牛のロースが、事前に試食したときよりもうんと美味しくなっていたのはなぜでしょうか・・・。


事前準備段階では、どこの誰がつくったかわからないお肉として味見し、これは魚肉かビニールか、などと辛らつな印象に、みな頭を抱えてしまっていたのですが、本番では肉に応じた厚みにカットし、きれいに盛り付けて出されたことと、1分間アピールでつくり手の思いを直に聞いたことがお肉の味に重大な影響を与えたようです。
カット肉を冷凍真空パックで送られてきたために悲惨な色になってしまった北里八雲牛まで、「色は悪いが味はよい」と多くの方から評価されたのでした。


まだまだ消化し切れませんが、本当によい勉強になりました。
日本産肉研究会は、次回は3月29日(サンニクの日)に広島で開催されます。


今回の京都大会は、木下牧場さんとサカエヤさんと南山の取り組みを一モデルとして見ていただいたようなものですが、木下牧場の見学にも39名が参加され、非常に喜んでいただくことができました。




大変お世話になり本当にありがとうございました。