yakinikunanzan会長の事業承継奮戦記

子育てと事業承継について

短角牛の守り人(まぶりっと)

yakinikunanzan2006-09-12



9月10日の岩泉レポートです。


岩手県の岩泉は、遠い、とぉーい
ところにありました。


盛岡から車で2時間。
携帯電話の電波が届かない地というのは、
もうそれだけで、圏外という名の秘境、
桃源郷のような、すばらしい別天地です。


岩泉町は、日本短角和種の産地として有名なのですが、
わずか五百数十頭がここで肥育されているだけです。


それでも、短角牛は日本全体で、たったの3000頭ほどしか肥育されて
いないので、この数字を見れば、岩泉町は旧山形村と並んで「短角牛のふるさと」と
呼ばれていることに納得がいきます。


去年の9月に牛肉の調査研究事業で訪れたなつかしの玉山村藪川を通り過ぎ、
もっともっと、もーっと走ると、ようやく早坂高原に着きました。


そこで待っていてくださったのは、スローフード岩手事務局の茂木さんと
スローフードジャパン味の箱舟』事務局長、農学博士の川手督也先生。
そして、オール岩泉のエサで短角牛を育てることに挑戦しておられる畠山利勝さん。


遺伝子組み換えなしの飼料用とうもろこし「デントコーン」を栽培し、これで
輸入の飼料に頼らず、オール国産で穀物飼料を賄われるのですが、
1頭につき1アールのデントコーンを栽培せねばならないため、短角牛を
放牧している春・夏・秋の間は、このデントコーン作りで大忙しです。


*まもなく収穫というデントコーン畑の前で、川手先生(左)と畠山さん(右)のお話を伺いました。


こうしてオール国産に挑戦した初めての短角牛が、16頭! まもなく
畠山さんのところから出荷されるということでした。


10月の南山の短角牛フェアのことをお話しすると、同じことならこのこだわりの
短角牛を使ってほしいと、言っていただけたことには大感激でした。

ゴルフ場のように遠くに広がる草地は短角牛のために作られたもので、林間放牧で
山の木々の下草を食べるほか、短角牛が耕して管理する草地もバランスよく
形成されて緑が維持されています。


広大な牧草地で悠然と草を食む短角牛を眺めていると時間を忘れてしまいます。
川手先生も時間を忘れて熱心に解説してくださるので、本当によい勉強になりした。


早坂高原の放牧地で畠山さんとお別れし、次は、安家(あっか)へ向かいます。


途中フルフェイスヘルメットを身に付け原チャリで走っている方を見かけました。
その方は、放牧されている牛の様子を見てまわる「守り人・まぶりっと」と
呼ばれているのだそうで、正義の味方、ヒーロー参上!という感じでかっこよかったです。


安家(あっか)では、合砂(あいしゃ)哲夫さんが待っててくださいました。
合砂さんは、短角牛の放牧で安家森を守っておられる、スローフード岩手会長で、
短角牛だけでなく、黒毛和牛の子牛や、短角と黒毛の交雑種の飼育も
しておられました。


なんと、短角牛に、受精卵移植で黒毛和種の子を産ませるという最先端技術にも
挑戦しておられ、うまく黒毛和種の受精卵を宿してくれる短角の母牛を、
宝物だと仰っていました。


短角牛は、子育てがとても上手なので、黒毛の子が生まれてもちゃんと育てて
くれるのだそうで、黒毛の子牛も短角母さんといっしょに放牧に出されて
山で育って、丈夫な胃と丈夫な体がつくられます。


水も野菜も燃料の薪も全て自給自足。雪深い安家地区で5人の子を育てながら
山里の生活と文化を守っておられる合砂さん!


合砂さんの取り組みを解説しながら川手先生は、岩泉の生産者さんを称して
「すさまじくすばらしい生き方をしておられる」と表現されました。


*合砂さんの家の前の川。妖精がすんでいそうな空気です。


*合砂さんの家の横のデントコーン畑。早坂高原で見たデントコーンより背が高い。


*合砂さんの家の畜舎には、黒毛の子牛、短黒、短角牛の繁殖メス牛がいました。他の牛たちは山で過ごしています。


黒毛和種の子を妊娠中の短角牛。何度子を産んでも、こんな恥じらいのある色っぽい表情ができる、女の中の女です!


―続く―