yakinikunanzan会長の事業承継奮戦記

子育てと事業承継について

畜産の本来の理念にふれて

yakinikunanzan2008-06-12



牛は、古くから農耕牛や荷役牛として活躍し、人間の暮らしと共にあったものですが、この力持ちの働き者が、人間の食糧として飼われるようになり、そのあるべき姿が厳しく問われ始めました。


世界的な食糧危機を前に、いつも槍玉にあがるのが「肉食」。特に日本人好みの「穀物肥育された霜降りの牛肉」は、人間の食料を奪っている大悪玉とみなされているのですから、今後、焼肉屋は、どうやって生きていけばよいのでしょう・・・。


そんな葛藤を抱え、「存在を歓迎される焼肉屋への道」を模索しているわけですが、先日、岩泉町の「いわてスローフード協会」事務局の茂木さんから「畜産の本来の理念」について教えていただくことができ、ちょっとうれしくなりました。


その方がおっしゃるには、「畜産の本来の理念は、人間が食べられない草を牛に食べさせて、人間が食べられる食糧(牛肉)をつくること。」つまり、「人間の食糧と競合しない草資源から、人間の食糧となるタンパク質を得ること」なのだそうです。


これが、プレミアム短角牛の生産に乗り出された岩泉の心意気、バックボーンなのでしょう。


今、岩泉では、1頭当たり6トンのデントコーン(飼料用とうもろこし)を栽培しながらプレミアム短角牛の肥育に取り組んでおられ、今年は13頭ほどのプレミアム短角牛が出荷されました。


わずか13頭! しかしこの13頭を育ててくださった畠山利勝さんと佐藤安美さんのお二人の努力はすさまじいものです。えさ屋さんから配合飼料を購入して牛に与えることがどれほど楽なことかと痛感しながらも、あえて牧草やデントコーンの栽培に取り組んで、大型機械も駆使ながら自家産の餌で牛を育てておられるのです。



標高916メートルの早坂高原でもデントコーン栽培。茎や葉もすべてサイレージ(乳酸発酵させた餌)にして食べさせるので、穀物飼料ではなく粗飼料に分類されています。


しかも、悲しいほど耕地面積の狭い岩泉でこんな取り組みに挑まれたのですから、これは畜産の未来に希望の灯をともす大変な偉業だと思います。


プレミアム短角牛は、コンビニ弁当は一度も口にせず、母さんの手づくりの食事だけで育ったような、そんなものすごく育ちのいい牛だといってよいでしょう。その味は、牛肉本来の旨み。文句なしに味が深く、本当に上等の味がします。


先述の茂木さんは、今、「食のたからもの」のプロジェクトリーダー島村菜津さんの依頼で、短角牛について詳しく資料をまとめておられるところで、まもなく、魅力あふれる短角牛の情報が発信されるようです。


「国内のおいしいものを作る人々をいかに“食べ支える”か」ということをテーマに掲げられた情報発信には焼肉屋の使命も見えてきそうです。

茂木さんが短角牛の生産者さんを取材して回られた資料の原稿を途中で見せていただくことができました。
そこには、懐かしい生産者さんたちの思いがしっかりと込められていました。

「短角牛はこの地で育ってきた牛で、短角牛がいるからこそ山村の暮らしが守られている。そのことを多くの人に知ってもらいたいし、短角牛を食べることで、山村の暮らしを支えてもらいたい。」
(合砂哲夫さん)


「短角牛の特徴を活かすにはデントコーン肥育が有効だし、自給率向上にもつながる。短角牛肉の味、育て方、生産者の仕事、生産現場をもっと多くの人に知ってもらい、その上で短角牛を評価してもらいたい。」
(畠山利勝さん)


「岩泉は山が深く農業は自給自足程度の生産で、牛はただ一つの現金収入源だったので大切に飼ってきた。そのため地域の牧野組合の結束が強く、組織的に短角牛を守ってきた歴史があるのです。」
(佐々木久任さん)


7月12日(土)、プレミアム短角牛の応援イベントが南山で開催されます。岩手県の主催で講師は、あの「やまけん」さん!
近江牛・普通の短角牛・京都産のタンクロ(短角と黒毛の交雑種)とも食べ比べをしたり・・・と、意義深い面白い会を予定しています。


どきどきするような、刺激的なカウントダウンがスタートしました! 30日後を、お楽しみに!