yakinikunanzan会長の事業承継奮戦記

子育てと事業承継について

おかげさまで38周年

yakinikunanzan2009-11-12



今春、ご近所の山田さんから「半額払い戻しセールをまたやってよ!」とリクエストされ、今月20日(金)〜26日(木)までの1週間、きたやま南山の創業祭で半額払い戻しセールをすることになりました。


1971年11月の勤労感謝の日を前後してオープンした南山は、今年で38年にもなるのです。
まさかここまで続けられるとは思わない毎日でしたので、実は、これまで周年事業など思いもよらなかったのですが、年に一度は感謝祭ぐらいせねばということで、売り上げの落ちる11月を選び「創業祭」を企画することになったのです。



そうなると、少しは昔の南山のことを振り返らないといけません。


南山は、ど素人の父が、1965年8月に大分県中津市でコックを雇って洋食レストランを開業したのが始まりです。
京大で西洋哲学を学んだ父が、教師やカトリック教会の伝道士を経て、3年間の結核療養を終えた後、両親が農業を営む大分県に戻っての創業でした。


京都から家族6人が引っ越してスタートしたものの、3000坪の敷地の小高い丘に建つ白亜のレストランは、たちまち経営破たん。
田舎に突然出現した洋食レストランに恐る恐るやって来て、意を決して70円の「Boiled egg」なるものを注文した農家のおじさん、出てきた「ゆで卵」にたまげてしまい、二度と来ることはなかったということです。


しかたなしに、在日韓国人にとっての家庭でのご馳走の「焼肉」を母がつくり業態変更。私たち子どもは七輪に火を起こす手伝いをしたものです。


火起こしのドライヤーの音が鳴り響くことが繁盛のあかし・・・。
こじゃれた洋食レストランは煙もうもうの焼肉屋に変身して、以来、学者肌の父は、そこで飲食店経営の奥深さと魅力にめざめ、その後北九州と京都の河原町三条にも出店。
この2店目3店目は、凝りに凝った民芸焼肉料理屋で、食器にも食材にもとことんこだわった文化人の来る高級焼肉料理屋でした。


しかし河原町三条の店は懲りすぎて失敗。ししおどしと琴の音の響く森閑とした顧客ゼロの毎日には発狂しそうだったろうと思います。


そんな中、起死回生の大ヒットが北山通りに築200年の民家を移築した現在のきたやま南山でした。
滋賀県永源寺ダムに沈む村からただ1軒救われた建物が今の南山なのですが、当初はモルタル葺きで、移築前の農家の原型がよくわかる2階建てでした。




ど素人が、創業からたった6年間で九州と京都に4店もの店を作るというのは、確かに父は、超凡破格な天才でした。
飲食業を「基幹産業、農産物加工業、人材教育業」と定義して、その後の10年で全国展開。
農水省認可の協同組合を設立して安全安心な有機農産物の流通を作ろうと走り回っていました。


南は屋久島、徳之島。北は北海道の網走まで本当に全国を回って安全な農産物を提供してくれる農家さんたちとのつながりをつけようと、父は本当に頑張り、莫大な投資をして鹿児島から岩手まで全国に南山の「のれん分け店」を出店しました。
昭和56年、1981年には、新聞の紙面をしょっちゅうにぎわすほどの注目も浴びる南山でした。





こんな華々しい時代はあれど、台所はいつも火の車。父はバブル崩壊とともに、時代対応できなくなり、2001年8月に75歳で引退。うつ病から立ち直れず、今も失意のうちに病に伏しています。


2001年の8月以降数年は、南山のすべてを処分して整理する作業が続いたのですが、きたやま南山は債権者さんの絶大なご腐心によって、奇跡的に生き残ることとなりました。


きたやま南山を新規事業として再建するようにと債権者さんから言われ、過去をかなぐり捨て、父の目指したことを全否定しての事業継承でした。


しかし、目指せ普通の焼肉屋、目指せファミレス並みのちゃんとした接客!と、安売りに励んで頑張ったものの、事業の方向性に悩み、外に目を向けて出会ったのがモクモク手づくりファームさんです。


これは驚天動地でした。父の目指したことを健全な事業として成功させておられる方々がいることには、ただただ驚愕するしかなかったのです。(そんなことしたら南山みたいに絶対つぶれる!)と半信半疑ではらはらしながらモクモクさんから学ばせていただき、モクモクさんの仲間のグラノ24kさんのご支援で南山はなれを再オープン。こうして食農協働レストランをめざす現南山の原型が出来上がりました。


助けてくださった債権者さんやモクモクさん、グラノさん、そして先の見えない中で頑張ってくれたスタッフさんや業者さんたちへのかたじけなさで、なんとか事業を続けてきたといってもいい南山ですが、本当に、これまで南山を続けてこれてよかったと、感謝、感謝の毎日です。


なんといっても、たくさんのお客様の38年間の思い出が、南山には刻み込まれているのです。

30年前の思い出を語って下さるお客様、亡くなられたご主人の好きだった南山で、ご主人を偲びご主人の好物を召し上がるお客様・・・。
お客様の貴重な思い出が詰まった、お客様の大切な場所として、これからも南山を守っていかねばと思います。


父のスケールにはとても及ばぬ小さな現南山ですが、農家さんとのつながりを大切にし、安全安心な産直の食材を大切にし、今週末も、農家さんたちとともに「目指せとんとん!」を合言葉に元気になれる小さなマルシェ、土曜朝市を頑張ります。


丹後からは海産物も届き、今週末は、小さな朝市カフェも登場しそうです。牡蠣ごはんや桑の葉茶、朝市定番のカモミールティーで、お客様にはきっと楽しんでいただけることと思います。