南山の旧盆
9月29日(土)は、南山はなれで、韓国の伝統舞踊と伽倻琴、そしてチャンゴの演奏が行なわれました。
まだ信じられないような、いまだに夢のような出来事でしたが、いずれも、その道を究めておられる方々による、それはそれは、びっくりするほどのすばらしい舞台で、このもったいなさには足がすくむ思いでした。
会場いっぱい50人ほどの観客がはなれのロビーを埋め、小さな会場で始まった小さなちいさな舞台でしたが・・・
元先生が歌い上げる春香伝の切なさを堪能し、
金先生のお弟子さんたちによる立ち舞いに、韓国舞踊の基本を味わい、
李チャンソプさんによるチャンゴと心が清まる鐘の音に息をのみ・・・。
最後は金一志先生の閑良舞。これは男舞いです。
終わりの挨拶では、金先生が3人の弟子をいとおしげにお客様に披露してのエンディングとなりました。
今回、金一志先生がコーディネートしてつくりあげてくださった舞台は本当にすばらしいものでした。
惜しくも今回見逃してしまった方、11月26日(月)には、京都府立文化芸術会館で、もっときちんとした舞台が見られます。
李チャンソプさんも出演されますので、ぜひお出かけください。こんどはお見逃しなく!
さて、29日の中秋の行事には、舞台だけではなく、韓国の中秋のお膳の簡略版をディスプレイし、この中の何品かを取り入れたコース料理をお客様に召し上がっていただきました。それこそ厨房が走り回って準備したご馳走です。
近江悠紀会の岡本さんが刈り取ったばかりの古代米の稲を供えてくださいました。
実は、9月29日を前に、26日には、韓福眞先生をお招きして料理講習をしていただき、そこで学んだものを少しでも29日の行事に生かそうとがんばったのでした。
上の画像は、中秋のお膳の我流簡略版ですが、韓先生の資料の中からいただいた正式な画像はこちらで、とても厳かです↓
9月26日(水)、韓先生からは料理の手ほどきだけではなく、韓国の料理の心や食文化についても講義していただき、手間隙をかけ、捨てるところなくすべてを食べる韓国の料理の心を教えていただきました。
はなれのロビーで講習会の概略をお話いただいた後まずはユッケジャンスープの仕込み。
短角牛のブリスケとミノ・大腸と白ねぎが具材になります。
煮込み材料を鍋に入れた後は、すばやさが勝負の松の実粥(↓)とかぼちゃのお粥。
短角牛のすね肉の煮込みも時間のない中でコツのコツを教えていただきました。
最後は白キムチ。
韓先生の手際のよさには圧倒されましたが、受講者が来られる前に白キムチの具材(↓)を準備してくださいました。にんにく・生姜・栗の千切り、唐辛子、糸唐辛子、せり、細ねぎ、白ねぎ、梨、肉スープ。このほかに大根の千切り2キロと白菜の塩漬けは南山側で用意しておきました。
具材を混ぜ合わせ・・・
受講者たちが漬けていきます。
白キムチには、梨が大量に入りました。
唐辛子は、秀吉の時代に日本から韓国に入ったもので、キムチが唐辛子辛いお漬物になったのは、そのあとのことなのだそうです。
短角牛の煮込みもできました。
韓先生のテキストには、韓国の伝統料理の心を「敬いと分かち合い」とあります。
これは、韓国・朝鮮の一般家庭で主婦が大変な思いで用意する旧盆、旧正月、命日の料理に現れているものだと思いました。
借金をしてでも、それこそ取り付かれたように大量のご馳走を作る主婦。これはもうほとんど一族を守るための信仰のようなものです。
そして行事には一族が集まり、先祖にお料理を捧げて祈り、そのあとは延々と飲み、食べ語り、歌い、踊る家族の宴・・・。
翌朝は、ご近所にご馳走を配って歩くのですが、この役が子どもに回ってくると、お駄賃がもらえるので、ラッキーでした。
韓国では、中秋の料理の講習会を百貨店が開催しようとしたところ、受講者が集まらず、どこもが中止したとのこと。
在日の社会だけでなく、韓国でも中秋の行事は廃れつつあるようです。
こんな大変なことが、一般家庭で継承されるのはもはや無理というものではないでしょうか。
改めて、この数十年で断絶させてしまった高度な文化の重みを思い、「敬いと分かち合い」の料理の心と共に、せめてプロの料理屋がこの文化を継承していかねばと思いました。
今回の料理講習を機に、南山の4階にスクリーンとプロジェクターを移設し、とても気持ちのよいカルチャーホールが完備しました。
金一志先生が韓国舞踊の教室にも使ってくださる予定で、準備中です。
沢山の可能性の種を植え、明日から10月。年末年始と、年度末に向かって下半期へ突入です。