短角牛を愛する人たち
岩泉ふれあいランドでしこたま飲んで笑って食べた翌朝。ここは旅の疲れや二日酔いの心配など無用のところです。きれいな空気ときれいな龍泉洞の水と、思いやりあふれる人々の心遣いが、心身にたまった毒素を洗い流してくれるからです。
ふれあいランドの薬膳レストラン「縁樹」で、これまたすばらしい朝食をいただき、道の駅で買い物をした後は、次の目的地へ出発です。
道の駅をバスで出るときは、岩泉産業開発のスタッフさんたちが皆さんでお見送りしてくださいました。
二日目最初の訪問先は、釜津田の畠山利勝さんの牧場で、ここに着くまでの時間は、バスの中でお勉強。
岩手県庁流通課長で獣医の小岩さんから詳しい資料を基に短角牛について学びました。
釜津田に着くと、畠山さんの牧場の入り口には、短角牛のチェーンソーアートが鎮座して私たちを迎えてくれました。
「短角牛の里」と、おしゃれな表示もあり、まさにここは岩泉の短角牛の顔となっている牧場です。
牛たちは、生後24ヶ月齢前後になれば出荷されますが、3月〜4月に生まれてくるのが短角牛ですから、ここにいる牛たちは15ヶ月齢か、食べごろの27ヶ月齢ぐらいでしょうか。
秋〜冬にかけて南山に届いた短角牛の月齢が、時には19ヶ月、またあるときは2シーズン放牧の30ヶ月を超える月齢だったりしたことに、合点がいきました。
年間通して出荷せねばならないため、同じ時期に生まれた短角牛が十分成長してから以降も、1日8キロの餌をやりながら出荷調整をしておられるのです。
19ヶ月の弱齢牛が届くより、そりゃぁ30数ヶ月しっかり肥育された牛が届くと、南山としたら得した気分になるのですが、本当は、短角牛の旬の味というか季節の味というか、そういうことにも敏感になって、肥育月数に応じて肉の値打ちもあがるような、季節価格(?)のようなものができるべきなのかもしれません。
農家の1軒1軒が小規模で、家族同様に育てられているからか、短角牛の人懐っこさも、他の牛には無い魅力のひとつです。
配合飼料に頼らず地元産の餌で育てておられる「プレミアム短角牛」も見せていただきました。
デントコーンを乳酸発行させた、その餌がこれです。
デントコーンの葉も茎も実も、美味しそうなお漬物のにおい。
子どもたちは許可無くこの餌をほじくり出して牛に与えていました。(ごめんなさい)
ところが、効率的に太らせることを目的につくられた配合飼料を給与された牛と比べ、この餌で育つプレミアム短角は、後半の体重ののりが悪くなるとのことで、昨年の冬に南山に届くはずのものも、なかなか大きくならないということで出荷時期が1ヵ月半ほど伸びてしまったことがありました。
ただ、待って待って待たされて届いたプレミアム短角牛の肉の色つやと味は、さすが!の別格のものでした。
じっくり育ったすごい牛、それがプレミアム短角牛なのです。
畠山さんのところ牛舎は、運動のできるスペースが裏側にある二間続きの贅沢な広さで、牛たちはのんびりと本当に幸せそうでした。
これなら「ストレスフリーの牛」と呼んでも間違いないと自信を持ちました。
でも、さすがに出荷の時には「トラックから降ろすところで、ストレスを与えてしまう」と、農協の方が教えてくださいました・・・。
手塩にかけて育てられたこのかわいい牛の命・・・。
「美味しかった。ありがとう。」と言っていただけるお料理と、産地の思いが伝えられるようなおもてなしをせねば、本当に申し訳ないと、レストランとしての責任をまたまた痛感させられました。