yakinikunanzan会長の事業承継奮戦記

子育てと事業承継について

子ども達の心に刻まれたこと

yakinikunanzan2010-07-17

7月15日、大雨の合間を縫って佐村河内守(さむらごうち まもる)さんが京都に来てくださいました。
この日は、京都市交響楽団の練習場で、記者会見があったのですが、京響のすぐ近くの小学校にも、サプライズでお立ち寄りくださいました。


佐村河内さんが丸1日外出するには、強い副作用のある薬を1週間前から大量に飲んで、体調を調整せねばならないのですが、まさに命がけで、下鴨(しもがも)小学校の子ども達に語りかけて下さいました。



耳は聞こえなくとも絶対音感がある方だからでしょうか・・・。佐村河内さんの語りは、「声」という楽器を奏でるような、本当にすばらしいものでした。


完全に音を失い絶望で立ち尽くした日のことや、音楽を通して原爆の悲惨を伝えることをクラシックの作曲家としての使命に生きていることなど、ご本人の体験を通し、「普通でいることは、本当はとても幸せなことなのに、そう思えないのは、明るさの中で光を見出せないのと同じで、闇を直視し、闇を背負えば、わずかな光にも気づけるようになる」と、子ども達に、語りかけてくださいました。


戦争というのは、人を人とは思わぬ軽さがないとできない狂気なのでしょう。
リトルボーイ(ちいさな少年)という名の原子爆弾を広島上空で投下したのは、機長の母親の名を冠して「エノラゲイ」と名づけられた航空機B29。この軽さを、佐村河内さんは「ふざけるな!」と、怒りをこめて語られました。
たった1発の爆弾が14万人を殺し、死ななかった人には『殺してほしい!』と泣き叫ぶほどの傷を負わせ、放射能を浴びて壊れた遺伝子が、被爆2世、3世に原因不明の苦しみを刻印しているのです。


「闇を怖がらずに、なぜそういうことが起こったのか、二度と起こらないようにするにはどうしたらよいか、考えてほしい。」と、佐村河内さんは原爆の悲惨を子ども達に伝え、やんちゃな子ども達も、みるみる真剣な表情になって佐村河内さんのお話に引き込まれていきました。



高齢化が進む「語り部さん」たちがいなくなった後も、この悲劇を風化させることなく、子ども達に関心を持って語り継いでほしいという強い思いが、佐村河内さんにはおありなのでしょう。


放課後になっても、佐村河内さんから離れずに集まってきた子ども達に、サイン入りCDまでプレゼントしてくださいました。
驚いたことに、佐村河内さんは、60人の子ども達ひとりひとりに、「君は、あそこに座っていたね、君は前のほうに座っていたね、覚えているよ!」と子ども達一人ひとりを識別し、語りかけられたのでした。


この模様は、翌7月16日付け朝日新聞に載りました。

朝日新聞の記事

全聾で被爆2世の作曲家、佐村河内守さん(46)による原爆をテーマにした大作「交響曲第1番 HIROSHIMA」のコンサートが8月、京都市で開かれ、70分を超える全楽章が初めて披露される。
佐村河内さんが15日、関係者の招きで同市立下鴨小学校(左京区)を訪れ、平和学習を続けてきた児童らに「原爆の闇を一緒に背負い、伝承してほしい」と語った。

佐村河内さんは広島出身、両親は広島で被爆した。17歳から激しい耳鳴りや頭痛に苦しみ、35歳で聴力を失った。
絶対音感を頼りに作曲活動を続け、2003年、「交響曲第1番」を完成させた。

京都は原爆投下候補地の一つだった。佐村河内さんは下鴨小の児童らに「君たちも被爆3世になる可能性があったんだよ」と話しかけた。
話が終わると、児童らは佐村河内さんのもとに駆け寄って「原爆は二度と目にしたくない」「闇を背負って未来を考えたい」と口々に話した。
佐村河内さんは京都初演を機に、曲名に「HIROSHIMA」を入れる。

コンサートは8月14日午後2時半開演。小学生〜18歳未満や、障害者と介助者の無料招待(申し込み必要)がある。
問い合わせは、エラート音楽事務所(075・751・0617)へ。(秋山千佳)


下鴨小学校のPTA行事で取り組んだ「佐村河内さんの生き様を伝える」企画は、居合わせた人だけが見聞きするだけではあまりにもったいなく、スタジオセラヴィの細見さんにお願いして、記録に撮っていただきました。


細見さんは、昨年3月の「敬牛の集い」も映像記録にとって下さった方で、その後、そのDVDは、京都市立池田東小学校での「命の授業」で、「なかのりさん、ありがとう」の絵本と共に利用していただくことができました。(7月22日の朝日新聞に、その授業の様子が紹介されるようです)


佐村河内さんと子どもたちの交流は、8月14日のコンサート終了後も、コンサートホール近くの「北山ふれあいセンター」で開催されます。
http://www.fukushi-hiroba.com/samuragochi/index.html



京響の練習場に立たれ取材を受ける佐村河内守さん。
8月14日当日のコンサートは、ご自身は聞くことができないので、指揮者と会場の振動で、曲を想像されるのだそうです。
世界初の全楽章演奏となる「交響曲第1番HIROSHIMA」を、どうぞお聞きのがしなく!