ほんまもんの但馬牛
ややこしい話になってきました。
先日から南山のおすすめメニューに出ているのは、滋賀県竜王町の岡喜牧場で育ったA5の但馬牛(BMS8)。この枝肉といっしょに岡喜さんからいただいたのがこの感謝状です。
つまりこれは、滋賀県産の但馬牛で、但馬牛の近江牛で・・・。お客様にどう説明したらよいのか、大混乱です。
兵庫県で生まれた純粋な但馬牛が兵庫県で育てられると、神戸ビーフになるのですが、それが滋賀県で育てられたのですから、これは当然神戸ビーフとはなりません。ブランドは「近江牛」となり、それでも純粋な但馬牛には違いないので「全国但馬牛枝肉共進会」で優良賞に入賞し、とびっきりの「但馬牛」としての栄誉もいただいているのです。
これが兵庫県で育っておれば、南山で購入することなど不可能な、高価な神戸ビーフになるのですが、岡喜さんとのお付き合いで、何とか手の出るお値打ち価格で分けていただくことができました。
この但馬牛、名前がまた、かっこよくて、「志門」くん。男の子です。
子牛登記証のほかにもこんな証明書もついてきました。
この子の名付け親は細川尚志さんです。
ご自分の名前の一字をとって生まれた子牛に名前をつけられたのですから、本当に愛情いっぱいに子ども時代をすごした牛なのでしょう。わが子のように大切に育てられた様子が想像できます。
岡喜さんのところではたいていメスの子牛を導入しておられるのですが、但馬牛を導入されるときだけは去勢にされます。
但馬のメス牛は育てにくいから・・・とのことで、皮下脂肪が薄く、骨が細く、風邪をひきやすい但馬牛を育てるのは、大変な技術がいるようです。
岡喜さんは、但馬の牛にこだわらずに九州はじめ全国から子牛を導入しておられるので、餌の食いつきの良い育てやすい子牛はメスを導入して育て、700頭の中から岡喜さんの目にかなった牛を南山に納めてくださるので、宮崎県生まれの近江牛、熊本生まれの近江牛・・・と、いろんな近江牛をいただいてきました。
「近江牛」の定義は、「優秀な子牛を導入もしくは生産し、滋賀県内で最も長く肥育した黒毛和種」。
ということで、宮崎生まれの子牛が、滋賀県で育てられれば宮崎牛より高い値がつく(?)近江牛になるのですから、「近江牛」というブランドも、「神戸ビーフに負けない近江の但馬牛!」と強がっているのとは逆の、すごいブランド力をもっているのです。
なんともいえない矛盾に満ちているのがブランドの世界のようですが、原産地より、ブランドより、本当に信頼できるのは、「ウソ偽りのない生産方式を情報公開してくださる生産者さん」の「誇りと信用力」なのではないでしょうか。
生産者さんと親しくお付き合いさせていただいている南山は、まずは生産者さんを裏切ることなく、その思いをそのままお客様にお届けしたいものです。
船場吉兆さんの「但馬牛」は、九州でがんばっておられる生産者さんの誇りを踏みにじり、さらに日本が誇る和牛の素牛「但馬牛」を粗末にした、とても悲しいウソだったのではないでしょうか。
穀物飼料の高騰に直撃され、生産者さんは本当に大変なことになっています。今心配すべきは、生産者さんの意欲です。
11月20日の生産者さんとの交流会には、短角牛の生産者さんだけでなく、超ビッグな牛肉のエキスパートの先生方、近江牛の生産者さんたち、そして、野菜作りのカリスマ太秦の長澤源一先生もおいでになり、もったいないような勉強をさせていただきます。
11月20日の交流会にと、岡喜さんが特別の但馬牛を分けてくださったように、岩手のお客様のためにと、長澤先生も超こだわりのお野菜を提供してくださいました。長澤先生と岩手の短角牛生産者さん合砂哲夫さんは、イタリアの第1回テッラマードレ以来の再会を京都でなさるのですから、とても嬉しいことになると思います。
こんなもったいない、有難い機会を得て、だんだん怖気だし、畏れをいだいている南山ですが、こうなったら、とことん教えていただいて、とことん勉強して、力を貸してくださった皆様にお返しをせねばと思っています。