yakinikunanzan会長の事業承継奮戦記

子育てと事業承継について

小さいからこそできる質の追求


2月は、真冬の寒さの中に新しい命を芽吹かせる時期なのでしょうか。
南山では、お雛様を飾り、旧暦の年末年始を熱くなって、走り回っています。


昨日は、南山の創業者料理教室のあいまに、春のデザートメニューの試食検討会が行われました。


料理教室は2回目の開催ですが、参加された方々の楽しそうなお喜び以上に、南山の味をつくりあげたメニューデザイナーの李松順さんも、久しぶりの業務用のキッチンに立ち、誰よりも嬉しそうでした。



新作スウィーツの試食検討会では、春のいちごスウィーツに混ざって、糖質オフのデザートも、素敵なものがエントリーされました。



これは、田野畑山地酪農牛乳を使ったカタラーナ。ラカントSでキャラメリゼした濃厚なクレームブリュレ風プリンです。


昨年南山を卒業した元店長の春菜さんが田野畑山地酪農牛乳「志ろがねの牧」へ新規就農者として嫁入りし、一生懸命直販している「草だけでできたミルク」を使ったデザートです。


田野畑山地酪農牛乳は、本当に周年放牧されているというか、執念で放牧されている、幸せな牛たちの幸せミルクです。この「しあわせをありがとう牛乳」でつくったアイスクリームとヨーグルトも新作メニューにエントリーされ、好評を博しました。



少しでも良いものをつくりたいという誇り高い生産者さんの思いを、どのようにして商品としてお客様に伝えるか・・・。南山の目指すところはその1点です。これは、生産者さんとのご縁が深くないとなかなかできないことかもしれません。


電話1本で届けてもらうモノの加工ではなく、生産者さんと一緒に安全安心で美味しい食の質を高めていく関係を、南山では一番大切にしています。


そのため、先日は、お店を休業させていただいて、スタッフたちといっしょに「生産者さんの思いを知る」研修に出かけました。


まずは、南山の建物と同郷の永源寺から移築された「田舎の親戚・香想庵」で鹿肉料理を美味しくいただき、
池田牧場さんのお話を伺いました。





生産調整で大量に牛乳を捨てねばならなかった悲しさをバネに、酪農家の思いを伝えるためにジェラートづくりを始められた池田牧場の喜久子姉さんは、苦労話を笑い話にしてお話しくださいました。
「匂い込みで250円!」と、牛舎の横でジェラート屋さんを始め、今は牧場から少し離れた山の中で、おしゃれなカフェと、ご実家を移築してつくったレストラン、そしてキャンプ場を経営されています。


池田さんは、獣害で駆逐される鹿肉を苦労惨憺して「美味しい料理」に進化させ、農と環境を守り、「命をいただくこと」を伝える役割を日々深めておられます。
山で勝手に育った鹿肉がここまで美味しく出来るなら、牛肉を美味しくできないはずありません。


池田牧場さんのご努力の前では、都会で牛肉料理を売ってる南山の努力なんぞ、けし粒みたいなものだと恥ずかしくなりました。


池田牧場さんをあとにして次にお訪ねしたのは、愛荘町の岡部農園さん。



岡部さんは、白いお皿にサラダを盛り付けるイメージを持って作付をなさるという素敵な農家さんで、微量栄養素を、様々な有機肥料で調整する技術を説明してくださいました。
おから、米ぬか、酢などなどを、まるで調味料の様につかってよい菌を養い、苦くないお野菜(害のないお野菜)の旨みをつくりあげられるのです。



美味しいと言ってもらえることが自分の生きがいとおっしゃる岡部さんは、自分の努力を理解してくれる「知った人」の分しか野菜を作らないという頑固な方で、あちこちのレストランに直販しておられ、今は、後継者づくりが一番の関心事。
岡部さんの野菜ファンのレストランに野菜を届け続けるため、自分の技術を次代に伝えたい、ということで、「なんでも教えるから勉強に来い!」と南山の若手スタッフたちを熱心に口説かれました。


最後に回ったのは、いつも大変お世話になっている木下牧場さん。
なんと、私たちが行った時にちょうどお産があり、母牛が一生懸命子牛を舐め続ける姿に皆で見とれてしまいました。



今回の研修には、サカエヤの新保社長とサークルワークスの松井敬樹さんも、トレーナーとしてご同行くださり、木下牧場で貴重なお話をしてくださいました。


単なる「消費者」なんて人はいない。誰でも何らかの生産に関わっている「生産者の端くれ」なんだから、どこまで良いものをつくろうと努力するか、努力すべき方向は同じこと。
そうおっしゃるサカエヤの新保社長も、莫大な自己投資をしながら、より質の高いものと質の高い情報をお客様に届ける努力をなさっています。


小さい企業でも、いや、小さいからこそできる、あくなき質の向上・・・。
南山のスタッフ一人ひとりが、生産者さんの誇らしい努力に触れ、私たちの目指すべき姿を感じ取ってくれたのではないでしょうか。


本当に素晴らしい生産者さんに囲まれている幸せを噛み締めています。
ありがとうございました。