yakinikunanzan会長の事業承継奮戦記

子育てと事業承継について

岩手の素晴らしい人たち


陸前高田の被災松が、ご精霊をお迎えする迎え火として地元で燃やされ、そして京都での送り火としてもつかわれることになったそうで、やれやれです。
やはり、亡くなられた方々も、まずは地元の心のこもった迎え火を目指してお帰りになってから、京都の壮麗な五山の送り火で見送っていただけるほうが、結果、よかったと思うしかありません。


京都の汚名挽回を心に期している方が私たち以外にも大勢いらっしゃることを思うと、今年の五山送り火は、きっとすばらしいものになると思います。


ところで、セシウム汚染牛問題は、日に日に業界の傷を深めて行っていますが、五山送り火の被災松騒動で、この逆風の強さが骨身に染みた感じです。


セシウム検出せず」という検査結果が、松の木でも通用しなかったという驚くべき現実・・・!!


私たちは、「いわて短角和牛」10検体分のセシウム検査がすべて「セシウム検出せず」だったという検査結果をもって、「安全なものは安全です!」と訴え続ける立場を貫いていますが、被災松からも、現実の厳しさを教えられました。


でも、うれしいことに、8月20日(土)21日(日)の牛肉サミットでは、いわて短角和牛の安全性をいっしょにアピールしようと、遠い遠いみちのく岩手の岩泉町から助っ人3人が駆けつけてくださることになりました。



本当にありがたいことです。
この大震災で非業の死を遂げた方々に、せめて生きている人間同士が手を取り合って一生懸命に生きようとしている姿を天から見ていただければと思います。


私たちにできることはたかが知れていますが、「真剣に被災地を応援しなくてはいけない」という現実を一番大事にし、ぶれることなく私たちにできることを続けていきたいと思っています。


南山のスタッフたちは、5月に奥州市前沢のフレンチレストラン「ロレオール」へ行って、伊藤シェフのもとで研修させていただきました。
陸前高田を通って大船渡での炊き出しに参加させていただいたスタッフのレポートを以下に転載し、もう一度気持ちを新たにしたいと思います。


今回お世話になったのは、前沢にある地産地消のフレンチレストランのロレオールさんです。

オーナーシェフの伊藤さんはできるだけ地場(岩手)のものを使うことを心掛けられ、他には町興しの会社(農家さんと
連携されてるみたい)の社長(ボランティア)もしたり、地域に根付いた活動に積極的に取り組まれておられます。


お店の営業はお昼がビュッフェ形式の前菜付のランチで、夜は予約のコースのみです。
                   

震災後は月曜日をお休みにして炊き出しに行かれたり、復興支援食事チケット(地産地消レストラン全店あげての取り組み)を販売されたりと支援活動も積極的に取り組んでおられます。


お料理教室を行ったりもなさっています。
                    

炊き出しお手伝いの内容は、まず野菜の洗いとサラダ作りです。
教えていただいたポイントとしては、綺麗なものから洗うと貯めている水を換えずに済むので無駄がないのと、もう1つは「葉モノは刃物を嫌う」
葉モノ野菜は包丁を使わず基本手でちぎります。
(痛みにくいのもあるし、他にも理由がありそうですが)


伊藤シェフ曰く「野菜は捨てる所がない」端のくずは勿論、皮や芯もブイヨンを取ったりするのに使います。
肉くず、野菜クズ、焼いたくずも全て使い、デミソースもここから出来ています。
 

続いてローストビーフです。今回はこちらからお送りしておいた短角の内平を使いました。
うちではカブリを外して赤身塊だけでやりますが、伊藤シェフは周りを軽く掃除するだけで後はかぶり付きで丸々焼き上げます。
ここでもすじは勿論、すじ以外の薄皮、脂すじなどもとっておきます。


焼きは前日ではなく当日の朝一でやりました。                
炊き出しとは言えより良い状態でより美味しいものをというお気持ちからだと思います。
                      
周りを焼きながら、出てくる肉汁を全体にかけジューシーさを保つ。
天板に整形した時に出たすじや肉くずと野菜くずを敷き、その上にお肉を乗せて120℃で約1.5時間焼きます。

時間はあくまで目安で肉の種類で火の入り方が違ってくるので、中心まで入ってるか確かめながら…


焼き終わりのすじや野菜クズを鍋に入れて赤ワイン、塩コショウ、フォンドボーを入れてグレービーソースを作ります。

伊藤シェフのお仕事ぶりは素早くても1つ1つが丁寧で素材(肉、野菜)の切り方1つでも味が変わるので、単純な作業
に思われがちだが、大変重要だと仰っておられました。

それと調味料にもこだわって宮古の塩(岩塩)、サラダドレに使う和歌山あたりのポン酢だとか良いモノは積極的に使う所は見習いたい。


2日目、炊き出しは、大船渡市の大船渡中学校へ行きました。
昼40人夜40人の計80人分です。人数はロレオールから伊藤さん含め2人、肉のオガタさんから2人、南山から2人です。


(備品リスト)  うろ覚えですが…
ゴトク×1 カセットコンロ×2 ボウル(大きめ)1 ナベ(大きめ)1
レードル×4?トング×4? タレポット×2? ヘラ×2 紙食器類
ガスバーナー アルコール ゴム手袋 まな板×2 包丁
食材(ローストビーフ、スープ、サラダ、人参のグラッセ、ソース)

備品は抜けている所もありますが、大体上記のような感じで、避難所にも少しは調理器具があるため、足りない場合はそちらでお借りしました。
大事な点は何を持っていったか備品リストを作ることと、小さいもの(トングやレードル、ラップやアルコールなど)には店名をマジックで書いておくことです。

被災地と避難所の写真は一切ありません、お察しして頂けたら…と願います。
到着後は付け合せのジャガイモを茹で、ソースの仕上げ、盛り付けの準備等をして避難所の方からの要望で、支援物資にあるものの中から主婦にでも簡単にできるものを教えて欲しいとのことで、伊藤さんが長いもの輪切りとさばの水煮缶を
オリーブオイルで炒めるものを作って下さいました。

人数は当初の40人を上回り60名近くになりました。
今までもメニューによっては何故か急に人が増えたことがあったようです…


大船渡への道中、陸前高田市を通りました。ある所から景色が一変し、今までに見たことがない風景が広がっていた。自分が行った時には瓦礫や車などかなり片付けられて道も復旧していた(最初は瓦礫をどかしながら走っていたらしいです。)が、それでも言葉にはできないくらいでした。

大船渡中学の校庭は一面に仮設住宅が建てられ、だんだんとそちらへ移られる方も増えてきているみたいです。
避難所には食品、調理器具などの支援物資は足りてきている様子でしたが、プライバシーも皆無で心の面での負担やストレスは相当なものだと思います。

今回は炊き出し終了後、避難所の本部の方が伊藤さん並びにスタッフの紹介をして下さり(ここではこういう炊き出しがほとんどなかったみたいです。)
被災者の方々から「ありがとう、おいしかった。」とお礼の言葉を多数頂きました。
私には計り知れないほどの苦しさ、悲しみの深さ、生活の不便さがあるにも関わらず昼食の手伝いに来ただけの私にまでお礼の言葉を下さり、被災者の方々の強さを実感し自分に出来ることは少ないのですが、被災者の方々が震災前の日常を取り戻せる日が来ることを願うばかりです。

今回の炊き出しを踏まえて次回にできることを考えてみると、今回と同じく現地シェフのお手伝いと食材提供。
(南山単体でやるのは現実的に厳しいと思います。)

  
本当に1人1人では些細なことしかできないかもしれませんが、各方面で言われてるように息の長い支援が一番大切だと思うので同じ日本で私たちには想像も出来ない被害に遇われた方々がたくさんいることを忘れないようにしたいです。