yakinikunanzan会長の事業承継奮戦記

子育てと事業承継について

伝えるべき「売り」は、つくり手の思い

yakinikunanzan2009-11-03



すぐそこに食糧危機が迫っていようと、すぐ食べられる物がコンビニにあふれ、「飽食」が「欠食」という問題を生む時代・・・。


それこそピンからキリまである多くの食材の中から国産の食材だけにこだわるのは、結構大変なことなのですが、南山ではさらに、甲乙つけがたい優秀な自国産の農産物の中から「なぜこれを選んだか」を、お客様に説明できないと、値打ちが伝わらないので苦労しています。


生産者さんの思いの強いもの、一生懸命がより真摯に伝わってくるもの、生産者さんの情熱に打たれるもの、そんな食材を手にすると、やはり調理場の意欲も、サービスするスタッフの意欲も違ってきます。「売り」に勢いが出てくるのです。


要は、生産者の魅力を語れることが、飲食業者としては一番マニアックな、プロらしい売りになるのではないでしょうか。


10月は、京たんくろ和牛弁当をデビューさせるためのお弁当の全面的なリニューアル企画や、冬ギフトの企画などで「何が売りなのか」を徹底的に考えさせられることとなりました。


その一貫で、10月22日は全日空ホテルで開催された「異業種京都まつり」に出展。




南山と日本海牧場さんが農商工連携でブランド化事業に挑戦している「京たんくろ和牛」をしっかり試食していただき、開発中の冬ギフト、二段のお重2種と三段のお重1種に、いくらぐらいの価値があると思うか、アンケート調査させていただきました。


「京たんくろ和牛のロースステーキが焼けてきました〜!! お早くご試食くださ〜い!! 早く来ないとさめまっせ〜! 早く来ないとこげまっせ〜!」
「京都で、年間30頭しかつくられていない和牛、京都でしか食べられない希少な和牛!! さあ、いくら?」
「短角牛の赤身のうまみと黒毛和牛の脂の甘さが両方活かされた新ブランド牛でっせ! さあ、いくら?」

 
そんな具合に大いに楽しく京たんくろ和牛をアピールしてきました。






ついでに、グラノ24Kの小役丸社長からアドバイスされた「京都の百姓百人のタレ」もいっしょにつくりませんかと、ハバネロの社長とも意気投合し、丹後の梨や黒にんにくなどとも早速話をつないでいこうと会場で盛り上がってしまいました。
これは、二つとなりのブースで出しておられたハバネロの焼肉のタレを拝借してきて、京たんくろ和牛のステーキにかけ、両方の試食をしていただいたのがご縁でした。
かましくも(失礼!)おかわりをする人が出るほど、試食は大好評! おかげさまでタレもお肉も絶賛されました。


さて、南山の三種の産直和牛のうち、生産者さんとの距離が一番近いのが、木下牧場の近江牛。親子孫3代が日々進化する、元気と笑顔があふれるプロ根性のある方たちなので、文句なしの信頼とお肉の質に自信を持っています。
南山が赤身のうまみと脂質を評価し、霜降り度には価値を置いていないため、市場評価にあらがって「本当においしいお肉」づくりを追求してくださり、生産者ブランドを確立しつつある方々!
一番元気を下さるすばらしい生産者さんたちで、毎月ご自分たちの育てた牛の味を南山で確かめ、お客様もたくさん連れてきてくださる大得意さまでもあります。(下記画像は、近江牛木下牧場の高校2年生の牛飼いお嬢さん:木下牧場のブログより)



そして、もう一つの産直和牛は、短角牛。
遠い遠いみちのく岩手の太平洋側、かつては日本海から津軽半島を回ってたどり着く、気の遠くなる遠隔地だった岩手県三陸海岸側の町、岩泉で育つ短角牛です。

ここは、町をあげて短角牛の振興に取り組んでおられるので、誰が窓口かわかりにくいのが難点。産地の情報発信も弱く、他の産地の短角牛との違いや岩泉ならではの短角牛の売りは何なのか、ともすれば見えにくくなってしまいます。


そんな苦言を伝えたところ、上記の画像のほか、町をあげて飼料用とうもろこし「デントコーン」づくりに励む画像を送ってきてくださいました。
輸入穀物飼料に頼らずに可能な限り自給飼料で短角牛を肥育できるようになるため、大型ダンプを連ねてのデントコーンサイレージ作り!







「某通販雑誌に載ってた短角牛より、岩泉の自給飼料生産体制はしっかりしていますよ! 来年は自給飼料(デントコーン)と国産のフスマで育つプレミアム短角牛が今年の倍以上、45頭仕上がります。冬場の短角牛の端境期用には、2シーズン放牧のメスを用意しています。」
そこまで聞けば、岩泉の短角、負けてないやん! と、一安心。南山のお客様へも顔が立とうというものです。
この2シーズン放牧のメス牛は、南山が特に指定して冬場に購入している短角牛で、通常の短角牛の2倍放牧され、出荷適齢の24ヶ月を過ぎても、太りすぎることはなく、よりプレミアム短角牛に近い清浄感のある味の短角牛です。


しかし・・・、こんな長すぎるうん蓄、どうやって情報発信すればよいのでしょうか。


ギフトやお弁当に添える印刷物、店内のメニューブック、限られた掲示スペースで、そして何よりスタッフの口から情報発信できるよう、がんばらねばなりません。
大変ですが、本当に有難く楽しい、やりがいのある仕事です。