yakinikunanzan会長の事業承継奮戦記

子育てと事業承継について

やまけんさんの「短角牛オフ会」で学んだこと

yakinikunanzan2008-07-01



7月12日(土)に南山で開催される「プレミアム短角牛を食すセミナー」は、岩手県の主催なのですが、ここにやまけんさんが講師で招かれています。


「やまけん」さんは、ご自身「いわて短角和牛」の素牛(母牛)のオーナーでもあり、今春生まれた子牛があまりにもかわいい女の子だったため、この牛を肥育牛として育てて食べることに躊躇し始めておられます。


「やまけん」さんから「さち」と命名されたこの子牛の運命はいかに・・・と、気になるところですが、ともかく、「やまけん」は、ただの美食家でも、単なる食ジャーナリストや流通コンサルタントでもない、本気で日本の農業のこと、食のことに実践的な取り組みをされているすごい若者です。しかも思いっきり明るく、人に元気を与えるオーラと気配りと、素敵な奥さんをお持ちだということが、6月23日の短角牛オフ会に参加させていただいてよ〜くわかりました。ほんとうにうれしい出会いでした。


南山では、今年やっと13頭だけ出荷されたプレミアム短角牛を6頭分けていただいて、3月から6月までの期間いつでもプレミアム短角牛を食べられる状態にしていたのですが、残念ながらプレミアム短角牛の存在自体が世の中にアピールされぬまま6月が過ぎてしまいました。



「南山の短角牛ランチ」 プレミアム短角牛の盛り合わせ


来年度は50頭に増産されるプレミアム短角牛に、このままでお客がつくのかどうか・・・、おせっかいな心配とはいえ、老婆の心はやきもきさせられてしまうというものです。


やっと6月23日のやまけんさんの短角牛オフ会でプレミアム短角牛の値打ちが世に知られたのですから、生産者さんはじめ、プレミアム短角牛にかかわった産地の皆さんには、大きな大きな勇気になったことでしょう。しかも、やまけんさんは、このオフ会だけでなく、その後もプロのシェフたちにプレミアム短角牛を広めておられるのですから、殺人的な忙しさの中、本気ですさまじい行動をされているすごい方だと思います。


短角牛のおいしさと生産者さんの苦労を知っている私たち南山としても、もっと多くの方に、このプレミアム短角牛を食べていただき、来年度仕上がるプレミアム短角を応援していただきたいということで、実は、7月に本当の最後のプレミアム短角牛(7頭目!)を仕入れることにして、7月12日(土)の「プレミアム短角牛を食すセミナー」に備えました。


やまけんさんの短角牛オフ会ほどの濃厚な中身には及ばないでしょうが、あの短角牛オフ会を通してさらにバージョンアップした「やまけん」さんの短角牛への思いが、しっかり語られることと思います。



 
東京バルバリの小池シェフのすばらしいお料理(↑ブレザオラ・水茄子・フルーツトマト)と比べればそりゃぁ遜色するでしょうが、当日用意するのは素材そのものの旨さに迫るメニューばかり。 (・・・焼肉屋だったらそれは当たり前です。はい。)


プレミアム短角牛はもちろん、京野菜のお料理や、いわて短角和牛の幻のホルモン、そして、プレミアム短角・普通の短角(肥育期に濃厚飼料で育てられています)・近江牛・京都産タンクロ(日本海牧場で育った短角の母牛に黒毛和牛をかけた和牛間交雑種)、この4種をブラインドテイストで当ててもらうというお楽しみ企画も用意していますので、関心のある方は、ぜひ7月12日の会にご参加ください。


http://www.nanzan-net.com/fair/0807_1.html



さて、6月23日のやまけんさんのオフ会は17000円以上の、申し分のない値打ちがありました。 
料理もすごかったですが、正直それ以上にすばらしかったのが「やまけん」さんのつくる場の空気と講師陣のお話でした!



最初に語られた農水省の塩川白良参事官は、「日本短角種プロジェクト」というタイトルの講演資料をもとに、食料自給率の向上という明確な目的と、日本短角種振興の意義、そしてその方策を鮮やかに語られました。


草を食べておいしく育ってくれる短角牛を耕作放棄地に放牧すれば、地域の活性化と、食料自給率の高い畜産ができるというわけです。


とはいえ、なんといっても食料自給率向上には米を食べることが一番で、37万トンの米の増産(消費の増加)で自給率が1%上がるのに対して、牛の餌を国内で作ることで食料自給率を1%引き上げるには、370万トンもの餌が必要ということです。


塩川参事官からは、日本の食料自給率の問題をおしゃれにわかりやすくまとめた冊子やDVD を参加者全員がいただきました。読みたくなる農水省発行の出版物! とてもセンスのあるもので、これはすごくうれしいお土産になりました。



次なる男前は、岩手県畜産課の坂田さん。
短角牛に魅せられた獣医師が、短角牛の魅力と苦悩を、ふんだんな写真を見せながら解説してくださいました。


短角牛は、経済生産性を超えたところで、人を魅了してやまない牛なのでしょう。
短角牛を語る坂田さんの目の輝きは、短角牛の生産者さんたちと同種の実直な愛に満ちたものでした。


7月12日には、この坂田さんが短角牛を語ってくださいます。


そして、もう一人のビッグゲストが、(有)シェパード・中央家畜診療所の、かの松本大策さん。ほんまに男前!! しかも、めっちゃ面白すぎる語りの中身が辛口でシリアス! そしてすごく心やさしい!!!


やまけんさん絶賛のゲストたちを直に見て、やまけんさんは決して大げさな表現をする人ではないということがよくわかりました。



松本先生のお話は抱腹絶倒ものだったのですが、話の中身は泣けるほどのいい話・・・。


黒毛和牛生産者さんたちがA5のBMS12を目指して肥育せざるを得ない現実をどう変えるか。味優先で取引されるようになれば、牛にも、人にも幸せなのに・・・。
でも人の味覚はさまざまで、慣れた味をおいしいと感じるものなのだから、とろける黒毛和牛のおいしさも、赤身のおいしい短角牛も、それぞれの違いを売りにしていくことで対立構造は作るべきではないというお話には、「牛さん」と生産者さんへの深い愛情を感じました。(松本先生は、牛を「牛さん」と呼ばれます)


日本の牛肉は、トレーサビリティシステムとポジティブリスト制度で世界一の安全装備が出来上がっているが、これは自国の生産者に苦労を強いておいて、同等の安全点検をスルーさせた輸入牛肉を流通させているという、どうしようもない現実にも言及されました。


松本先生のレジュメは、それを読むだけでどきどきするほどの濃い中身で、お話自体はレジュメからするとほんの一部でしかなかったのですが、東京23区の小学生の給食残飯が、世界の飢餓の700%をまかなえる量だというお話にはショックでした。


レジュメの最後は、「よりよい生活のために」というタイトルで、「食を考えることは生きることを考えること。みんなでしあわせになろう!」としめくくられています。


先生には厳しい現実が見えているから、あえてそのような結語を選ばれたのかもしれません。


「これからの日本の畜産」〜構造不況を乗り切れるか〜というページから、読んでわかる項目だけを拾ってみると・・・、 
   ・飼料価格は3年間下がらない
   ・消費行動の抑制要因は「将来への不安」   
   ・定量定時出荷からの脱却
   ・農業生産者に正当な報酬を


・・・もっともっとじっくりお話をお聞きしたいと、時間を忘れてしまったオフ会でしたが、気がつけば帰りのバスの時間が迫り、最後のお料理を食べ損ねたうえ、やまけんさんや参加者の皆さんとゆっくりお話をするひまもないまま、タクシーを飛ばして新宿のバス乗り場へ駆け込み、おかげさまで翌朝無事に京都へと帰りついたのでした。


やまけんさん、講師の先生方、そして東京バルバリの皆様、本当にありがとうございました。