yakinikunanzan会長の事業承継奮戦記

子育てと事業承継について

人間が育つ最低条件

yakinikunanzan2006-01-20



南山で、ある男の子がアルバイトをしていたことがあります。
彼は勉強が嫌いで、定時制高校に通いながら働いていたのですが、
結局高校を中退してフランスに渡り、馬を世話する専門学校に入って
生き生きとした人生を切り開きました。


その彼は、生後まもなく家庭を失い、ひどい心の傷と大きな困難を
抱えたままフランス人の独身女性に養子として引き取られ、
本当に惚れ惚れするようないい男に成長しました。


彼の数奇な物語は、「ママンにありがとうは言わないで」という
お母様(マリ=ルネ・ノワールさん)の著書に詳しく書かれています。


この本が出版された折、出版記念の催しを南山で開催し、
「一人でも多くの子が、家庭で育つことができるように」とシンポジウムで
訴え、京都市里親会の活動を紹介したり、コンサート&お食事会に
児童養護施設のお子さんを招待したりということをしました。


そんなことがご縁で、京都市里親会さんは、昨年に引き続き、今年も
南山で新年会を開催してくださいます。


血縁を超えて、人間の子どもに、人間として育つ最低条件である「家庭」を
提供するという活動は、本当にすばらしいものです。


どんなへたくそな子育てであろうとも、親からの愛情を注がれて育った人間は、
いつかどこかで親を超え、自分育てをしていく力を発揮できるでしょうが、
家庭を失った幼い子が、思いをかけてくれる親代わりの大人に出会えぬまま
児童養護施設という物理的機能の中で、職員という名の労働者に育てられる
いうことは、これはもはや社会的虐待とさえ言われています。


少子化の一番怖いところは、社会全体の子育て力が、低下することでは
ないでしょうか。


児童養護施設児童相談所の一時保護所も定員オーバー状態が続いています。


最近の若者の質を嘆くばかりでなく、もっと「人間が育つ最低条件」にも
目を向けていかねば大変なことになりそうです。


血縁を超え、世代間の命のリレーを支える里親さんたちを、南山は
こっそり応援しています。



*マリ=ルネさんは、今は愛する息子のいるフランスに戻り、癌治療に専念されています。