yakinikunanzan会長の事業承継奮戦記

子育てと事業承継について

BSEをもたらした牛乳悲話


昔、ある生協の総代をやらされたことがあります。

総代になると、いろんな産地見学や生産者さんとの交流、商品企画、
試食や試飲にも、参加することになります。


実はさっぱり訳のわからないまま、はずれくじを引いた当番の義務として、
いろんな行事にしぶしぶ参加していたのですが、ある生産者さんとの交流で、
大変ショックな体験をしました。


いかにも実直そうな初老の酪農家の方が、生き物を飼うことの大変さを語られ、
24時間気が休まらないこと、親の死に目にも会えないと覚悟してやっている
ことなど、一生懸命お話くださいました。


夏と冬では、牛乳の成分が違うということも勉強になり、牛乳は、こんなに
苦労して作られているのか・・・ということがとてもよくわかりました。


そしてそのお話を伺った後、牛乳の試飲会が行われ、数種類の牛乳を
参加者が飲み比べてどれがおいしかったかを投票しました。


しかしその投票結果は、生協牛乳に軍配が上がらず、「乳脂肪分4・2以上」
を売りにしている牛乳が、一番の人気を集めました。


ただ総代としての参加義務だけを事務的に果たして、やれやれと帰りかけたとき、
先ほどの酪農家の方と若い生協職員が話しこんでおられる所にでくわしました。


「夏場の牛乳で4.2なんて無理です」と青くなっておられる酪農家に、
その生協職員は、「総代さんたちが選んだのは4.2牛乳ですから!」と、
にべもなく答えておられ、牛飼いのじいちゃんは、肩を落として絶望的な
表情をしておられました。


・・・これはもう、20年ほど前の話なのですが、今でも無責任な総代の
一人として心が痛んでいます。


「夏場に乳脂肪分の高い牛乳をつくろうなんて、むちゃですよ。それこそ
とんでもない餌でも食わせないと・・・。そんな無理をさせれば、牛は、
確実に早死にしますよ。」


この話を聞いた椎名さんからこう教えられ、私もBSEを招いた責任者の
ひとりなんだと、ますます申し訳ない思いになっているのです。


スーパーの特売品に必ずラインナップされる「水より安い牛乳」を見るたび
あの酪農家の絶望的な顔を思い出しています。