yakinikunanzan会長の事業承継奮戦記

子育てと事業承継について

短角牛を愛する人たち

yakinikunanzan2007-07-27



岩泉ふれあいランドでしこたま飲んで笑って食べた翌朝。ここは旅の疲れや二日酔いの心配など無用のところです。きれいな空気ときれいな龍泉洞の水と、思いやりあふれる人々の心遣いが、心身にたまった毒素を洗い流してくれるからです。


ふれあいランドの薬膳レストラン「縁樹」で、これまたすばらしい朝食をいただき、道の駅で買い物をした後は、次の目的地へ出発です。
道の駅をバスで出るときは、岩泉産業開発のスタッフさんたちが皆さんでお見送りしてくださいました。



二日目最初の訪問先は、釜津田の畠山利勝さんの牧場で、ここに着くまでの時間は、バスの中でお勉強。
岩手県庁流通課長で獣医の小岩さんから詳しい資料を基に短角牛について学びました。


釜津田に着くと、畠山さんの牧場の入り口には、短角牛のチェーンソーアートが鎮座して私たちを迎えてくれました。

「短角牛の里」と、おしゃれな表示もあり、まさにここは岩泉の短角牛の顔となっている牧場です。


牛たちは、生後24ヶ月齢前後になれば出荷されますが、3月〜4月に生まれてくるのが短角牛ですから、ここにいる牛たちは15ヶ月齢か、食べごろの27ヶ月齢ぐらいでしょうか。



秋〜冬にかけて南山に届いた短角牛の月齢が、時には19ヶ月、またあるときは2シーズン放牧の30ヶ月を超える月齢だったりしたことに、合点がいきました。


年間通して出荷せねばならないため、同じ時期に生まれた短角牛が十分成長してから以降も、1日8キロの餌をやりながら出荷調整をしておられるのです。
19ヶ月の弱齢牛が届くより、そりゃぁ30数ヶ月しっかり肥育された牛が届くと、南山としたら得した気分になるのですが、本当は、短角牛の旬の味というか季節の味というか、そういうことにも敏感になって、肥育月数に応じて肉の値打ちもあがるような、季節価格(?)のようなものができるべきなのかもしれません。


農家の1軒1軒が小規模で、家族同様に育てられているからか、短角牛の人懐っこさも、他の牛には無い魅力のひとつです。




配合飼料に頼らず地元産の餌で育てておられる「プレミアム短角牛」も見せていただきました。
デントコーンを乳酸発行させた、その餌がこれです。




デントコーンの葉も茎も実も、美味しそうなお漬物のにおい。
子どもたちは許可無くこの餌をほじくり出して牛に与えていました。(ごめんなさい)


ところが、効率的に太らせることを目的につくられた配合飼料を給与された牛と比べ、この餌で育つプレミアム短角は、後半の体重ののりが悪くなるとのことで、昨年の冬に南山に届くはずのものも、なかなか大きくならないということで出荷時期が1ヵ月半ほど伸びてしまったことがありました。
ただ、待って待って待たされて届いたプレミアム短角牛の肉の色つやと味は、さすが!の別格のものでした。

じっくり育ったすごい牛、それがプレミアム短角牛なのです。




畠山さんのところ牛舎は、運動のできるスペースが裏側にある二間続きの贅沢な広さで、牛たちはのんびりと本当に幸せそうでした。
これなら「ストレスフリーの牛」と呼んでも間違いないと自信を持ちました。
でも、さすがに出荷の時には「トラックから降ろすところで、ストレスを与えてしまう」と、農協の方が教えてくださいました・・・。


手塩にかけて育てられたこのかわいい牛の命・・・。
「美味しかった。ありがとう。」と言っていただけるお料理と、産地の思いが伝えられるようなおもてなしをせねば、本当に申し訳ないと、レストランとしての責任をまたまた痛感させられました。

農家の嫁の目に映る、素敵な暮らし  


畠山さんの牧場を後にして、次はすぐそばの繁殖農家、三上さんのお宅へバスで移動です。
ここは、大人気ブログ「農家の嫁の事件簿」の舞台です。



このブログの中の素敵な世界に魅せられてはるばるやって来たものの、現実は・・・ブログの登場人物たちも風物も、実物がはるかに素敵!!でした。
これなら、都会から来た「農家の嫁」には、毎日が大事件のはずです。書き留めたいこと、絵に残したいことが溢れて止まらなくなることでしょう。


表にはおしゃれなカフェ「ぶるっく」があり、きれいな花壇には元気な花々!!
その裏のお庭には噴水が涼しげに噴き出す小さな池までありました。ここが昼食会場です。


昼食前に、AKIさんが一行を案内してブログの世界を一つ一つ見せてくださいました。



農家犬チャコは、とても元気で、チャコの前を通らせていただいて裏のわさび畑や田んぼ、デントコーン畑、自家用のトマトの畑などを見せていただきました。





 

お隣の家も遠くに見えます。牧草を採取するための牧場が山林の際まで広がっているのですが、それでも熊は牧草地を越えてやってくるのだそうです。

三上さんのところは母牛11頭をもつ繁殖農家さんですから、牛たちは早坂高原で放牧中で牛舎にはいないはずですが、なんと1頭だけかわいい子牛がお留守番していました。



今春が初産の若いお母さん牛は、初めての子育てがうまくできず、この子はここで里育ちになるのだそうです。
この子のお母さんは、放牧場で子連れの母牛を沢山見て、来年はきっと上手に子育てしてくれることでしょう。


早坂高原で、「母牛は自分の子を識別してその子だけを大切に育てるので、ほかの子牛に乳を与える乳母のような役割をする母牛はいない」と聞いていましたから、この子が放牧場で育つのは無理なようです。


それにしても乳量豊富なこの子のお母さんのミルクがどうにももったいなくて、一度でよいので短角牛のミルクも飲んでみたいものだと思いましたが、AKIさんですら、短角牛のミルクは飲んだことがないとのことでした。



11頭の母牛を養うためにちょうどよい大きさのデントコーンの貯蔵庫「サイロ」がこちら。
ちょうどこのサイロにいっぱい入るデントコーンが畑に植えられているそうで、牧草地、デントコーンの畑、田んぼ、などなどが11頭の牛と共に暮らす三上さんご一家にぴったりのサイズになっているようでした。



お昼は、茂木さんが岩泉の特性弁当「文月のお昼飯(おちゅうはん)」を手配してくださり、あっと驚くご馳走です。
上の写真は子供用ですが、大人用のデザートにはどんぐりの巾着(灰抜きのどんぐりに山栗のあん入り)が入っていました。


三色握りは梅入り、はたしめじの炊き込みご飯、古代米のおこわ。
山菜のくるみ和えや「らぶぐ田楽」といって鮭のすり身に蕗味噌をのせた珍味もはいって、それはそれは手の込んだ岩泉の味でした。






カフェぶるっくの店内も、三上家の庭先もすべて占領しての昼食。
そして昼食後にはすごいサプライズが二つ!!


このカフェを経営しておられるAKIさんのお義母さまがかわいいスグリの実ののった、苺ムースをご馳走してくださり、「農業って面白いよ」とAKIさんをゲットしたすてきなご主人TAAさんが、チェーンソーアートの実演をしてくださったのです。


トップの画像、短角牛のチェーンソーアートは、畠山さんの牧場にいるものですが、この作品の写真を昨年の9月に岩泉に来たときに茂木さんから見せていただいて感激し、頼み込んで南山に飾る短角牛のチェーンソーアートをTAAさんに作っていただいて以来のご縁!!


短角牛の母牛をとお願いしたら、本物の面綱までつけて送ってくださったのですから、これにはもう、感謝しきれませんでした。↓これが南山にお嫁入りした短角牛の母牛。トナカイたちとの相性もよく、招き猫ならぬ招き牛というか、今では南山の守り神みたいな存在です。


2日前まで「やませ」がふいて寒かった釜津田がこの日はとんでもない暑さ!!
その暑さの中、TAAさんは汗だくでチェーンソーアートの実演をしてくださいました。





厳しい日差しの中、見物人には木陰で涼み、TAAさんは汗だく。本当に申し訳ないことでしたが、ものの10分ほどで丸太がかわいい熊に!! 子どもたちは大喜びのびっくり仰天です。


釜津田って、ほんとうにすごいところなのですね。 
涼やかなAKIさんがさりげなくつづる釜津田の魅力を、ほんの少し垣間見せていただいただけの訪問でしたが、私たちも、生涯記憶に残る大事件を体験させていただくことができました。
本当にありがとうございました。


長い長い旅の二日目はまだ続きます。